暖簾 ★★★

暖簾
1958 スコープサイズ 123分
BS2録画
原作■山崎豊子 劇化■菊田一夫 脚本■八住利雄川島雄三
撮影■岡崎宏三 照明■下村一夫
美術■小島基司 音楽■真鍋理一郎
監督■川島雄三


 大阪の昆布問屋に奉公に出た吾平は、暖簾分けで一本立ちし成功するが、台風の襲来や太平洋戦争によって全てを失うが、頼みの長男が戦死し、軽視していた次男の孝平が復員するや、現代的な経営手法とアイディアで老舗を復活させる。

 大阪商人の一代記を森繁久彌が得意の大阪弁で演じ、しかも父親と息子の二役を演じ分けるという難易度の高い文芸映画。しかも宝塚映画の製作で、日本映画全盛期の創作力の旺盛さを感じさせる贅沢な映画だ。特に傑作というわけではないが、普通に見て、普通に堪能できる敷居の低い映画だ。川島雄三については、正直理解しがたい部分もあるが、この映画はとっつきやすい部類だろう。

 技術的には、中盤の昆布の加工工場が台風の影響を受ける場面のフルショットがミニチュアワークで描かれており、押し寄せる濁流や、火花を散らしながら倒れる電柱といったスペクタクルをかなりリアルに描き出す。後半は、森繁の一人二役の合成ショットが多数登場し、単純に画面の中央で分割した固定マスクショットではなく、意外なほど凝った構図を作り上げている。しかも、コマのがたつきは皆無で、当時としては見事な完成度だ。特殊技術のクレジットは無いのだが、東宝特殊技術部の仕事だろう。あるいは岡崎宏三と宝塚映画撮影所レベルでの工夫だろうか。

 演技的にも後半の森繁の一人二役が見所で、前半の中村鴈治郎浪花千栄子の夫婦や、山茶花究の登場などは、このジャンルの映画では定番の配役なので、安心して見ていられる。

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