花影 ★★★

花影
1961 スコープサイズ 99分
高槻セントラル
原作■大岡昇平 脚本■菊島隆三
撮影■岡崎宏三 照明■比留川大助
美術■小島基司 音楽■池野 成
監督■川島雄三


 バーのホステス(池内淳子)が、様々な男と関係を持ちながらも古美術鑑定家の男(佐野周二)への思慕を貫きながら自殺するまでを回想で綴る文芸映画。十分井説得力があるかどうかは微妙なところで、唐突な幕切れにも思える。

 なんといっても池内淳子の美しさに目を奪われる。実は顔の骨格が松たか子に似ているので、リメイクするとピッタリかもしれない。実際、見てみたい。この後、東京映画に多数出演しているが、この女優の結局持ち味は十分には活かされなかったのだろう。実にもったいない話だ。(加藤泰の「瞼の母」は幸運な例外だったようだ)

 岡崎宏三の撮影も見事で、佐野周二の家のセットや、重要な舞台となる裏の川岸の墓地のロケ撮影の繋がりがスムーズで、光と色調の抑制がうまく効いている。

 池内と関係するのが池部良高島忠夫三橋達也たちで、特に曲者の有島一郎が珍しく弁護士役で印象に残る。

 ヒロインとの間にプラトニックな絆を保持しながら、零落して骨董品の偽物を売りつけるようになる佐野周二の茫洋とした大人の存在感は独特のもので、やはり突出した個性である。

 淡々と死を選ぶヒロインの姿には、「剣」や「斬る」の市川雷蔵の姿がダブって見えるが、この映画ではナレーションの使用に違和感が残る。

 川島雄三の演出は、効果音の活用に特色があり、ヒロインのアパートの外から聞こえる運動会の声を強調したり、イメージショット的な桜の実景に不吉なほど鋭く誇張した鳥の声を重ねてみたり、音の演出が目立つ印象だ。それは相米慎二の記憶にも連なるのだ。

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