基本情報
その女を逃すな ★★☆
1958 スコープサイズ 52分 @アマプラ
企画:大塚和 原作:島田一男 脚本:中平康 撮影:井上莞 照明:沼倉良夫 美術:江坂実 音楽:宇野誠一郎 監督:若杉光夫
感想
■ムショを出たごろつき、五本松の虎吉が、情婦が浮気したとの噂を聞いて、殺しにいくが。。。というお話で、サスペンス映画。刑事よりも、犯人の心理と行動のほうが主眼になる。
■民芸映画制作の中編日活映画で、脚本が中平康だけど、あまり冴えない刑事ドラマで、原作のどこが良かったのか?といった感じ。主演の安井昌二が地味ながら刑事ものとしてのリアリティを佇まいから出しているのは心強いし、実質主演の垂水悟郎はなかなかの力演だし、確実に印象に残る。民芸映画制作だから低予算なのでロケ撮影主体だけど、それほどドキュメンタリータッチではなくて、それでも夜間シーンは疑似夜景ではなく、夜間ロケ。終盤の墓地の場面などもさすがによく撮れている。
■硫酸で顔を焼かれた佐野浅夫のエピソードも中途半端で勿体ない気がしたけど、浮気していた女が撃ち殺されたのにそのまま黙ってずらかる小心なサラリーマンを下條正巳が演じて、これは十八番と言える好演。こんな役ばっかり。
■ただ、リアリズムで押すのか、サスペンス活劇にするのか、腹を決めきれない感じがあり、煮えきらない。大塚和の民芸映画制作なのに、社会性が一切ないのも意外だけど。まあ、脚本の問題ですね。後年の『七人の刑事 終着駅の女』は、やはり異色の傑作だったなあ。
