■キイハンター12話「幽霊船が呼んでいる」(脚本:高久進、撮影:下村和夫 照明:山本辰雄 美術:北郷久典 監督:佐藤肇)
■東側の海底ウランの専門家が亡命を企んだため、東側スパイ(根上淳)に殺され、仲立ちをした中立某国大使館員まで謎の女(牧紀子)に殺される。それは顔のあざのある狂女であった。
■というお話なのかどうかもよく分からない錯綜したお話で、要は佐藤肇と高久進が、舞台は幽霊船で、狂った女が連続殺人鬼、しかもそれが双子の美人姉妹の片割れで、などとニヤニヤしながら打ち合わせして、一方で、キイハンターは国際諜報事件がテーマなので、無理やり科学者の亡命話を絡めたから、掴みどころのない疑問だらけの脚本ができたわけだろう。見せ場重視で、辻褄は二の次という。
■予告編ではヒチコックが云々と言っていたけど、むしろウィリアム・キャッスルに近くて、佐藤肇は意識していたと思うけど、一般には知られていないので、ヒチコックということにしたのだろう。実際、怪奇趣味とギミック志向が見事に見せ場に結実した、雰囲気だけは満点の怪奇劇。
■肉切り包丁を持った、狂った女殺人鬼を見せるのに、完全に幽霊のように演出するあたりが出色で、部屋にただ立っている姿を、シルエット気味に見せるだけで、完全に幽霊の存在感になっているところが凄い。いまなら、髪が長くて、赤いドレスなどを着ているわけだけど、モノクロ撮影なので、完全に陰影だけで表現する。右手が不自然に後ろに隠されているところが憎い。(もちろんアレを持っているのだ)
■しかもそのメソソッドによほど自信があったらしく、三回も繰り返す。登場人物がはっと物音に気づく→ 部屋のドアがゆっくりと開いてゆく→ 登場人物が何かに視線を移動する→ その視線の先で灯りが消える→ 登場人物が視線をもとに戻す→ 部屋に幽霊のような女が立っている、という編集で、これなかなかよくできたモンタージュなのだ。何度も見返していると、感心する。
■ちなみに、#5「必殺の瞬間」(脚本:高久進、撮影:下村和夫 監督:佐藤肇)もお話はスカスカだけど、撮影と演出が冴えていて、西沢利明の心理的な憔悴ぶりをモノクロの陰影でたっぷりとサスペンスとして表現するあたりとか、ロケ撮影の手持ちや移動撮影のセンスの良さで際立つ。野際陽子を追うキャメラのおしゃれな移動!

