2016 横山秀夫サスペンス 陰の季節 ★★★☆
企画 :越智貞夫 原作:横山秀夫 脚本:窪田信介 監督:榎戸耕史
■映画『64』封切り時の連動企画として制作された仲村トオル版のD県警シリーズ『陰の季節』で、上川隆也版(2000年に真船禎が撮っている)のリメイク。でも、実は「陰の季節」と「黒い線」の2つの短編を合体させている合せ技。本作は監督が榎戸耕史なので、例によってほとんどハードボイルドで、演出が凄い。
■県警を定年退職して、産廃の業界団体に天下りしている元部長(伊武雅刀)が、約束の年限を過ぎてもポストを退かないので困った人事担当の調査官(仲村トオル)はその真意を探るが、過去の連続殺人事件との関連が浮上してくる。。。
■原作小説は横山秀夫の出世作で、実際よくできているので、原作に忠実に脚本化しているけど、演出と配役の妙で、なんとも容易に真似できない境地にたどり着いた秀作。とにかく榎戸耕史がべらぼうに巧い。このシリーズはとにかく低予算で、大したセットもないし、音楽もありものの流用なので、下手すると貧乏くさくて見てられないけど、配役は豪華だし、無駄のない脚本と卓越した演出で、ありふれた2時間サスペンスとは格が違う。特に本作は映画との連動で、映画版のキャストが登場する。三浦友和、奥田瑛二、佐藤浩市(回想的に)とかね。
■でも、やっぱり感心するのは榎戸耕史の映画並みの演出で、時々、異様に複雑なカッティング技を見せる。そして、それが伏線になっていたりするから侮れない。映像は、いまどきのシネマカメラ撮影の凝ったリッチな映像美とは比較にもならない素っ気ない、一見こだわりのない撮影なのに、編集によるカットのぶつかり合いによって、完全に映画仕様になる。このあたりは、誰も言及しないのだけど、横山秀夫モノの榎戸耕史演出は、実は非常に高度なことをやっている。
■実は仲村トオル主演の2020年『沈黙のアリバイ』(脚本:青島武、監督:麻生学)も先日見ているけど、やっぱり全然レベルが違う。仲村トオルの演技も違う(本作のほうがずっと良い)ので、演出家の腕の違いは歴然。横山秀夫サスペンスではおなじみの伊武雅刀もいぶし銀の演技だし、婦警のお姉さん(お母さんじゃないよ!)的な役どころの和久井映見も地味ながら抑えたいい演技。
■個人的には、榎戸耕史には時代劇を撮って欲しいのだがなあ。ひょっとすると三隅研次みたいな映画を撮りそうだし、逆に森一生みたいな映画を撮ってしまうかもしれないから。
