感想
■ある日、街にペンギンが現れた。その謎を追う小学生たちは森の奥に隠された謎の物体に遭遇する。しかも、その異物たちや不思議現象は少年の憧れのお姉さんに繋がっているらしい。。。
■原作は森見登美彦の有名小説。未読。でもあのとぼけた森見タッチで、このお姉さん憧れのお話をやられたら、堪らんわなあ。原作小説読みたくなってくるよね。
■というのも、映画の胆である「お姉さん」の姿かたちや声や雰囲気といったものには、原作を読む読者の数だけ幅があるだろうからだ。個人的には「おっぱい」にはあまり興味がないのだが、実際、なかなか魅力的に描かれてはいるけれど、いやいや少年にとってあこがれのお姉さんは、もっとこうじゃないといけない、といった拘りを呼ぶ原作であってみれば、俺のお姉さんはこんなもんじゃないという不満や異議が出そうに思うのだ。いや、出たからどうというものでもないのだが。
■お話はファンタジーではあるが、かなりSF寄りで、原作は日本SF大賞を受賞しているくらいだから、難しいSF的な理屈(ギミック)も出てくるし、そもそも主人公の小学生は天性の理系少年なのだ。ペンギン出現の謎と、小川の源流を探る追求と、入ってはいけない森の奥の秘密、これらがゆったりと並行して進み、もつれ合い、という2時間の尺がある映画らしいじっくりとした展開で、丁寧に事件の展開を描いてゆく。その中で、昭和な雰囲気のある小学生たちの人間関係が自然と浮かび上がる。いささか類型的な部分も目に付くが、敢えての選択だろう。
■実際のところアクションやスペクタクルを狙った映画ではなく、情感を描いた映画である。そこに地味な努力を重ねた映画で、後半はお約束通り大人の介入や異変の拡大といったサスペンスもあるが、そこをアクロバティックに描いて燃えさせる映画ではない。むしろ、そうした大事件が過ぎ去ったあとのある別れの情景がこの映画の地味な眼目である。そして、丁寧な仕事でかなり上手く描かれていて、静かな感動を呼ぶ。あくまで控えめにさらっと描くタッチが好ましい。
■この感覚は懐かしいなと思ったら、あれですね、山崎貴のデビュー作『ジュブナイル』がまさにこんな感じでした。ああ、懐かしい。でも、絶対原作小説は読みたくなるよね!
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参考
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☟これがメイキング本ですね。ちょっと欲しい気がするなあ。- 作者:
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- 作者:森見 登美彦
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- メディア: 文庫
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