俺たち流されてるんだ。地獄に向かって…日本名作怪談劇場『怪談 夜泣き沼』

■1979.8放映 原作:河竹黙阿弥(「木幡怪異雨古沼」) 脚本:杉江慧子、下飯坂菊馬 撮影:藤井哲矢 照明:釜田幸一 美術:吉村晟 音楽:牧野由多可 監督:家喜俊彦

■おなじみの木幡小平次の怪談話。幼馴染の二人で、死んだ後も女を取り合うという因果なお話で、女房を寝取ったために小平次を殺してしまう太九郎が亡霊に取り憑かれて錯乱してゆく。お話は単純だけど、なかなか情趣に富んだ演出で見ごたえがある。

■逃げる二人の乗った渡し船がいつの間にか三途の川にたどり着き、ロケ撮影からステージ撮影に切り替わる。製作は歌舞伎座プロだけど、京都映画に下請けに出されているので、京都スタッフらしい湿度の高い職人技が堪能できる。低予算なので美術セットなどは最低限だけど、ロケ撮影に異様に凝っている。川べりのロケで、せっかちなスタッフの頭が見切れているカットもあるけどね。(まだ、カットかかってないよ!)多分、昔のテレビ放送では映らない部分だったのだろう。

■実質的には綿引洪綿引勝彦)が主演で、小平次と太九郎の二人きりの友だちの間に何か特別なものが寂しく流れているというのが脚本の工夫で、太九郎から小平次にプレゼントした煙草入れが小道具として大活躍する。この二人の間に、ちょっと同性愛的な含みを持たせているかもしれない。「俺たち流されてるんだ。地獄に向かって…」太九郎は錯乱して殺人を重ね、女(新藤恵美!)と逃げ延びるうちに、振り出しの印旛沼に舞い戻ってしまう。そして遂に女を手にかける。

■このシリーズは京都の職人スタッフのアイディアがところどころに突出していて、本作ではラストで川地民夫(の亡霊)が川面に立っている幻想的な場面など、ロケ撮影の現場はいかにも大変そうだ。太秦の寺の池で撮ってると思うけど、キャストもスタッフも、かなり困難な撮影に取り組んでいると思う。歌舞伎座テレビの東京での安い撮影に比べると、頑張り過ぎに見えてしまうくらいだ。残業代出たのかなあ。。。

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