ホントにガメラ×パトレイバーだった!渋谷の大惨事ふたたび!阿鼻叫喚の『サイレント・トーキョー』

基本情報

サイレント・トーキョー ★★☆
2020 スコープサイズ 99分 @アマプラ
企画:阿比留一彦、紀伊宗之 原作:秦建日子 脚本:山浦雅大 撮影:山田康介 照明:渡部嘉 美術:黒瀧きみえ 音楽:大間々昂 VFXプロデューサー:赤羽智史 監督:波多野貴文

感想

■クリスマスイブの恵比寿で爆弾事件が発生、犯人は首相とのテレビ対談を要求、要求をのまない場合、次は渋谷交差点で爆弾が炸裂すると予告する。だが、首相はテロ犯の要求には従わないと強行路線を貫く。。。

■単純に言えばそんなお話なんだけど、そこにたどり着くまでにすでに退屈することになる妙なサスペンス映画。映画の肝はなんといっても、渋谷ハチ公前で実際に時限爆弾が大爆発して、渋谷交差点に集まったチャラい若者たちが文字通りゴミのように四散するさまを、意外にも入念に描くこと。そこだけがこの映画の美点で、そこだけは観る価値がある。もちろんこのあたりは『ガメラ3』の渋谷襲撃場面を踏襲していて、あれに負けたら作る意味がないよねという共通認識がスタッフ間にあったはず。ただ、映画全体のサスペンス構成は、伊藤和典金子修介に全く敵わないけどね。波多野監督、びっくりするくらいに下手なのだ。そもそも、この映画をステディカムメインで撮る構想が無理じゃないか。こうした素材こそ手持ちキャメラでいかないと。ステディカムのカットがことごとく間延びして退屈なのも、逆にすごいけどね。大ロケーション敢行しているのに。編集も売れっ子の穗垣順之助が手掛けているけど、なんだろうこの締まらなさ。

■真犯人の人間像にはひねりがあって悪くないけど、犯行の動機については相当に謎だし、説得力がないので、根本的に失敗している。原作小説のほうがそこは分があるのだろうと想像する。でもそんな人間おるか?と素朴に疑問を生むよね。ここには伊藤和典押井守の『パトレイバー2』を踏襲していて、日本に戦争状態を生み出そうとする犯人像が描かれるのだが、「これは戦争だ」と今更言われてもだね。

■今どき珍しくランニングタイムが99分しかないのはいいけど、その割にはのっぺりしたテンポで進むので、諸々の掘り下げが浅い。なので豪華配役もステロタイプな人間像になってしまう。西島秀俊勝地涼も、まあ役不足だし、主役のはずの佐藤浩市はそもそもあまり登場しない。広瀬アリスはかなり熱演するけど、やっぱりこの人はコメディが映えるよね。

■渋谷交差点の惨劇はもちろんロケできないので、『BLEACH』同様にオープンセットを組んで大量のエキストラを入れて撮影している。さすがはROBOTの制作なので、このあたりのノウハウは立派な積み重ねがある。もちろん背景の大半はCGを合成しているけど、違和感がない。VFXIMAGICAラボだけど、さすがに大御所らしいクオリティ。レインボーブリッジあたりのショットも現地ロケできるはずないので一部合成なんだけど、全く合成っぽさがないので驚いたよ。映像技術的には総じて非常に上出来。特に渋谷の大惨劇場面は、製作者のやるならとことんやれという殺意と怨念を感じるほどで、唖然とした。ここまでやるか。実際、よく撮った。この場面だけ繰り返し観ることをオススメする。でもこの怨念は誰に向けられているのか?


参考

maricozy.hatenablog.jp
広瀬アリスはTV版の『釣りバカ』が良かったよなあ。
maricozy.hatenablog.jp

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