本を焼くものはいずれ人を焼く。それはいいんだけど、色々飲み込みにくい『図書館戦争』

基本情報

図書館戦争 ★★☆
2013 スコープサイズ 128分 @DVD
原作:有川浩 脚本:野木亜紀子 撮影監督:河津太郎 ガファー:中野創平 美術:斎藤岩男 音楽:高見優 VFXスーパーバイザー:神谷誠 監督:佐藤信

感想

■メディア良化委員会の暴力的検閲が支配する近未来、本を守るため図書館は自衛のための軍隊・図書隊を組織した。図書館戦争の勃発である。そして新入隊員(榮倉奈々)と教官(岡田准一)のラブコメが始まる。やがて、私立歴史情報図書館の大量蔵書の引取をめぐって、メディア良化法シンパの過激組織が暗躍を始める。。。

■今更観ました、佐藤信介のキャリアアップに貢献したに違いないヒット作。多分、有川浩の原作小説ではSF的な設定とか架空世界の世界観が詳細に説明されているから説得力を増すと思うけど、映画だけ観るとさすがにすんなりと飲み込みにくい部分が喉に引っかかってしまうのは仕方ないよなあ。佐藤信介とそのチームのスキルは高いので、映像表現は安っぽくないし、実際金かかっているので、見栄えはする。軍事描写も本格的で、自衛隊の協力もあり、結構ゴリゴリしている。

■「本を焼くものはいずれ人を焼く」というナチス焚書事件を踏まえた警句は有意義で有効だし、テーマ的には今見てもちっとも古くないんだけど、いくらリアルに描いてもやっぱり「戦争ごっこ」にしか見えないし、戦術とか作戦が明確に打ち出されないからサスペンスも生まないし、平板な撃ち合いにしかみえない。だからアクション演出はレベルが高いけど、あまりカタルシスはない。そこは脚本の野木亜紀子も反省しているようで、後の『アイアムアヒーロー』では立派なアクション作劇を見せたけどね。

■一番問題なのは主演の榮倉奈々の謎の髪型と、ふにゃふにゃした演技で、一応軍事組織なんだけど、どうしてもそうは見えない。岡田准一との身長差を生かしたコメディは成立するし、妙にでかいガタイの所在なさ気な風情は悪くないけど、演技の質に問題ありだろう。


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