ウルヴァリン SAMURAI ★★★☆

The Wolverine
2013 スコープサイズ 126分
Tジョイ京都

■約70年前、長崎原爆投下の惨事から日本兵を救ったウルヴァリンは、そのときの兵士が今や矢志田財閥のトップとなって、死の床にあることを知る。来日したウルヴァリンは、矢志田の死後、巨大企業の跡目を巡る争いに巻き込まれるが...

ウルヴァリン流れ旅の日本篇で、何故か旧日本軍の捕虜になっているところから始まり、すぐに原爆投下という一大エポックに突入する意欲作。結局、あの時日本を助けたのは間違いだった、叩きのめしておくべきだったとアメリカが悟るという寓話になっている。クライマックスにはこれしかないという真相が明かされ、非常に堅強な構成を誇る空想科学活劇の好編に仕上がっている。アクションの見せ場をCGチームに投げっぱなしにせず、実写で撮れるところは頑張って撮るという姿勢が心地よく、アクションシーンの編集も細かすぎず、非常に観やすい。

■何しろ超大作なので、矢志田財閥の邸宅のセットなんて広大だし、アクション演出とシネスコ画面にピッタリな横長の見事な美術構築。終盤の見せ場となるウルヴァリン対忍者軍団の場面でハリネズミのようにされてしまう場面は、夜の雪の宿場町をアクション用に構成した美術装置が実に映画的な仕上がりで、ここはステージ撮影だが、往年の東映京都のような仕上がり。昔の日本映画なら、当然こんな風に撮れたのだが、今やハリウッドレベルの資本がないと出来ない仕掛けだよ。

■ヒロインを演じるトップモデルのTAOも身体がやけにでかいことを除けば演技的には案外達者だし、悪女キャラのヴァイパーを演じるスヴェトラーナ・コドチェンコワという女優さんの熱演もアッパレ。ミュータントかくあるべしという演出であり演技であった。亡き妻の幻影に引っ張られるウルヴァリンが立ち直るまでの心理劇を意外にも地の足のついた演出でさばいて見せたジェームズ・マンゴールドの演出には素直に感心した。

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