『ウルトラマンブレーザー』はニュージェネ路線を刷新する!ここでニュージェネ・ウルトラマンを総括するよ!

【最終更新:2023/7/20】
■「ウルトラマンブレーザー」がニュージェネウルトラマンの分岐点になりそうな雰囲気なので、それまでのニュージェネ路線の総括をしてみたいと思います。とはいえ、以下に述べたことは誰しも感じるところなので、製作陣は承知の上で「ブレーザー」をリリースしているはずです。なので、すでに解消済みの問題点だと思いますけどね。

これが欠点だ

ウルトラマンが喋りすぎ

■これは2018年「ウルトラマンR/B」で愛染社長が劇中で言及していたとおり誰しも感じるところで、スタッフも認識している。とにかくべらべらよく喋る。これは東映仮面ライダーでも顕著なことで、敵との戦いよりも、ヒーロー同志の戦いが作劇のメインになった「バトルロワイヤル症候群」によるところが大。その意味では深作欣二の影響力はサブカル路線にえげつない影響を与えている。

■これが面白いんだ、受けるはずとの認識があり、何故か流行になっているけど、オールドファンには終始謎でしか無い。そもそも、年長者にはぺらぺらよく喋る奴は信用できないという感覚があるから、最近のウルトラマンは軽薄で信用ならないという印象を与えた。

ウルトラマンがヤンキーだ

■同時に、喋っている内容があまりにヤンキー文脈なので、最近のウルトラマンは体育会系でヤンキー化したという印象を与えた。このことは坂本浩一の功罪であって、『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』でウルトラマンの敷居を下げて(?)を再生させた恩人でもあるけれど、ウルトラマンのヤンキー化を加速したことは否めない事実だろう。

ライドメカはCGだよ!

■基地描写やライドメカは基本的にすべてCGとなりました。2005年「ウルトラマンマックス」では鈴木健二が王道のミニチュア特撮で愛情たっぷりに入念に発進シーンのバンクショットを撮ったものですが、近年はそうした贅沢は許されません。

■その中でも『ウルトラマンZ』の特空機の発進などはミニチュアで撮りたいという意志を感じるところですが、それでも「ウルトラマンマックス」の洗練されたミニチュアショットには敵わない。

ウルトラマンがゴテゴテしている

■おもちゃを売るためにギミックが増えすぎて、何がなんだか分からないことになっている。ウルトラマンはどんどん外装を付けたり、デザインが変化するし、いま戦っているのが誰なのかすらよく分からない状況に。そもそも毎回変身するのに時間がかかりすぎで、そのことはドラマのテンポを悪くして、ドラマの密度の低下に繋がり、特撮はすごいのにドラマが響かないということに。これは本末転倒で、ドラマが生きるから、玩具が売れるのが本筋です。

怪獣がたくさん出すぎで混乱する

■とにかく『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル』『『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』』などで人気怪獣のぬいぐるみを大量に製作したので、どんどん使い倒せという製作側の指示で、往年の人気怪獣が何度も登場するから何のお話に何の怪獣が登場したのか、誰もわからないくらいに混乱してしまった。これも肝心のお話の理解や深耕に不利に働いた。ドラマが充実しないと怪獣の存在感は生まれないのだが、ここでも混乱が生じている。

悪役が陳腐

■シリーズ通しての悪役が設定されるようになり、成功した場合は、カタルシスが大きいが、失敗すると全編が失速するという弊害を招いた。しかも、悪役の設定や言動が陳腐になりがちで、大人の鑑賞に耐えない。特にこれに失敗すると『ウルトラマンタイガ』のように痛ましいことに。特撮演出などは凄かったのに!同じくいわゆるラスボスがごてごてした巨大な作り物になりがちで、これも退屈で興を削ぐことに。

いつからオープンナパームは正義になったのか?

■たぶん『ウルトラマンタイガ』以降だとおもいますが、やたらとオープン撮影のナパーム爆発を見せられるようになりましたね。その根源は1995年の『ガメラ 大怪獣空中決戦』だと思いますが、正直なところあれは単なるガソリンの燃焼にしか見えないので、興ざめです。

■もともと中野昭慶は『日本沈没』や『ゴジラ対メカゴジラ』なのど石油コンビナートの爆発シーンなどで実施していて、オープン撮影ではなく、ステージ撮影の枠の中に封じ込めることで特異な効果を生んでいたものです。単純に派手に行うと、ガソリンの燃焼にしか見えない代物なのですが、なんとなくオープンナパームがありがたいみたいな風潮が業界とファンダムの間に出来上がっていて、たしかに撮影現場は盛り上がるのだけど、映像を観ている一般観客にとってはかなりステロタイプな印象になっていますよね。

変身するのに時間がかかりすぎ

■変身するのに毎回1分以上かかってますよね。ニュージェネの諸悪の根源かもしれない。延々と冗長な手続きを経ないと変身できない。スペクトルマンでも上司の許可取るのにそんなに時間かかってないぞ。とにかく、毎回変身シーンを早送りしないといけないので、観ている方は大変なストレス。明らかにドラマのテンポやリズムを破壊していて、良いことは何もない。

■ということは撮っているスタッフは百も承知で、メイン監督がスポンサーと協議して改善に向かいつつある。らしい。頑張れ、田口監督。

これが美点だ

ミニチュアセットの進化・充実

■とにかく『ウルトラマンギンガ』が始まったときは、舞台が小学校の裏山から動かないという極限的な低予算作品に呆然としたものです。円谷プロウルトラシリーズで、ここまでハードルを下げたのかと。他のシリーズでは露骨な低予算番組があったけど、ウルトラをここまで安く作るのかと絶望した記憶があります。

■ところが、この路線が安定稼働したことから、そして『ウルトラマンギンガS』からは田口清隆が参加し、『ウルトラマンX』から辻本貴則、『ウルトラマンタイガ』から神谷誠が参加したことで、特撮面の充実は目を見張るものがあります。

■ミニチュア特撮をメインとしているので、徐々にミニチュアのストックが増え、スタッフの経験値も上がることで、映画レベルのミニチュアワークが可能となりました。というか、いまどき映画の怪獣はほぼCGなので、ミニチュア特撮の醍醐味はここでしか味わえません。というガラパゴスな魅力を掘り下げてきた。実際、田口監督の大胆なマッチムーブ合成や辻本監督のフェティッシュなミニチュア演出は世界的にみても稀有のものだと思います。

特撮のデジタル撮影

■これは製作側の工夫ではないけど、時期的にデジタル撮影機器が大充実したため、ミニチュアの高速度撮影が大変綺麗に撮れるようになった。フィルムではなく、完全なデジタル撮影で高速度撮影が可能になったことは行幸だったが、反対になんでも高速度撮影してしまう傾向があり、アクションが鈍重になって、昔のような軽快なアクションが減ってしまったのは少し残念。普通のアクションはノーマル撮影で良い気がするよね。このあたりは『ウルトラマンマックス』が意外といい線だった。
(つづく)

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