警察日記inスコットランドヤード『凶弾』

兇弾(字幕版)

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  • ジャック・ワーナー
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基本情報

凶弾 ★★★★
1948 スタンダードサイズ 80分 @アマプラ

感想

スコットランドヤードの新米警官と定年間近のベテラン警官の日常生活と、アプレゲールの青年が起こす無軌道な犯罪を並行して描いた、名門イーリング撮影所製作の警察映画の逸品。監督はその筋では有名なベイジル・ディアディン。基本的にドキュメンタルな作法で、いわゆる劇伴も使用せず、非常にタイトな編集で小気味よく展開する引き締まった映画。まだキャメラは手持ちではなく、がっしりとフィックスで廻すけど、贅沢なモノクロ撮影。

■新米警官の成長と、ベテラン警官の家庭生活や、お約束どおりに凶弾に倒れる悲劇を綯い交ぜに描きだすと同時に、粗暴な青年犯罪をサスペンスフルに描き、クライマックスは徐々に活劇とスペクタクルにエスカレートするという贅沢な娯楽映画で、実によくできている。警察署内の描写は実に牧歌的で家庭的なのが、古風な制服のせいもあってなんだか現代劇ではなくて時代劇かと錯覚するほど。ベテラン警官の殉職の顛末も実にさらっと描かれて、後のハリウッド映画や日本映画やテレビドラマではどんどん過剰にお涙頂戴演出になっていくところだが、非常に上品な描写。もちろん、残された老妻の嘆きなども品よく描く。

■アプレな青年役でダーク・ボガードが登場し、実際誰もが注目する儲け役なので、後のスター街道に乗ることができたわけ。ラストの競馬ならぬ競犬の競技場のロケも圧巻で、満員の会場に潜んだ犯人をいかに焙り出すかという趣向も気が利いている。徐々に追い詰められ、最後には警官隊に包囲される場面も、シンプルな照明効果が見事な撮影。ベイジル・ディアディン、凄い監督だったんだね!ホントに隙がない傑作。

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