THE MAN WHO HAUNTED HIMSELF
1970 ヴィスタサイズ 94分
DVD
■ヒッチコックが「ヒッチコック劇場」で映像化した「ペラム氏の事件」をベイジル・ディアディンが映画化したイギリス映画。DVDには、ジョー・ダンテやスチュアート・ゴードンの解説インタビューが収録されており、アメリカでもドライブインシアターで公開されただけの埋もれた秀作に目一杯の敬意を示している。
■じっさいのところ、ヒッチコック劇場版は短編小説的な回想を多用しており、脚本的にあまり良くできていないのだが、本作はじっくりとドッペルゲンガーとのすれ違いと邂逅をサスペンス仕立てで描き出し、主人公ペラム氏の心理劇としても説得力を増している。主演はロジャー・ムーアだが、二役を綺麗に演じ分けて、演技派の一面を見せる。クライマックスの二人一役のトラベリングマット合成もトム・ハワードが参加しているだけのことはある凝ったものだ。原色の照明効果を使った60年代怪奇映画的な演出はマリオ・バーヴァなどの影響かもしれない。スチュアート・ゴードンが「中年の危機」を描いていると解説しているのも納得の、若者向けというよりも大人向けの怪奇映画だ。さすがはイギリス映画、という渋さ。
■謎なのは、字幕の文字が妙に大きい上に、「これ」が「之」、「それ」が「其」などと表記され、どうも日本人が作成した字幕には見えないことだ。翻訳者には日本人名が記されていたが、字幕原稿を日本語に通じた中国人(?)がワープロ変換して字幕を作成したのだろうか?