A TALE OF TWO CITIES
1957 スタンダードサイズ 112分
DVD
■キープから出ている廉価版DVDで鑑賞。ところが、画質はピカピカの最高品質で、解像度の高いモノクロ撮影を満喫できるから侮れない。
■二都物語ってこんなお話なのかという、古典小説入門用にも楽しめる映画で、『ベニスに死す』の変態おやじのイメージしかないダーク・ボガードの若かりし頃の名演を堪能できる。端的に言って通俗メロドラマなんだけど、フランス革命前後のパリとロンドンの間を舞台と登場人物が行き来し、フランス革命の後ろ暗さと残酷さを強烈に批判するお話。もともとディケンズの考え方だろうが、ここまでフランス革命を批判的に描いた映画は珍しいのではないか。
■登場人物の行き来と人間関係は非常に複雑なので、2時間にまとめるためには相当苦労があったことだろうし、回想シーンの入れ方も不自然さがあるが、ラストの悲劇に向けて着々と構成されている。見事によく出来たメロドラマですよ。実質の主演はもちろんダーク・ボガードで、彼の酒におぼれる怠惰と惰性の人生がある女性との出会いを機に輝き始めるが、その行く末は自己犠牲による愛の成就であるというメロメロに悲壮な大メロドラマ。ラストのあたりは溝口健二の『近松物語』を思い出させるよなあ。というか、伊藤大輔の『元禄美少年記』にも似ているが、伊藤大輔が『二都物語』を参考にしたんだろうな。