堅実だけど、煮え切らない日活ハードボイルド『拳銃残酷物語』

基本情報

拳銃残酷物語 ★★★
1964 スコープサイズ(モノクロ) 87分 @アマプラ
企画:笹井英男 原作:大藪春彦 脚本:甲斐久尊 撮影:伊佐山三郎 照明:高島正博 美術:松井敏 音楽:池田正義 監督:古川卓巳

感想

■ハードボイルドらしいハードボイルドでなかなか良作なのだが、終盤で妙に倫理的に因果応報で纏めようとするところに無理があり、煮え切らないのは残念だけど、それでも見どころのある犯罪映画。多分終盤は原作から改変されているのじゃないかな。と想像する。

■事故で障害が残った妹に手術を受けさせるため、またしてもやばい仕事に手を出すことになるジョー。今度の仕事は現金輸送車襲撃だ。綿密な計画でうまくいったかにみえたが、運転手を運転席に残したまま強奪することになり計画に齟齬が生じる。。。

古川卓巳という監督はなかなか堅物の演出家のようで、第二幕まではかなりの上出来。サスペンスも効いているし、妹(松原智恵子)思いのジョーのメロの部分も嫌味がない。逆に言えば、このメロの部分がもっと強調されるのかと期待したのだが、そこはあまり踏み込まない。残念な気もするところだが、これは古川卓巳の硬派の資質だろうか。

■反対に第三幕はジョーを慕う川地民夫との関係に感心が向かい、川地民夫の殺害事件に接触することで、結局は事故死という結末に落とし込む。このあたりの作劇が、正直観客の期待とはそぐわないアレンジで、現金輸送車襲撃の犯罪者は最後には因果応報の哀れな最期を迎えなくてはならないという、日活の自制心が働いたものだろうか。大いに残念な結末だ。もっとカタルシスを!

■草薙幸二郎とか井上昭文とか梅野泰靖とか、こうしたジャンル映画にはピッタリのくせの強い脇役たちの嬉しい好演も見どころがあるし、悪くはないのだけど、クライマックスの肩透かし感は否めないなあ。観客が観たいものはそれじゃないよね。

参考

古川卓巳って確かに地味なんだけど、硬派で見どころがあると思う。派手さがないので軽視されがちだけど。
maricozy.hatenablog.jp
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