いくらなんでも眠くなる凡作『赤い蕾と白い花』

基本情報

赤い蕾と白い花 ★★
1962 スコープサイズ 80分 @アマプラ
企画:坂上静翁 原作:石坂洋次郎 脚本:池田一朗 撮影:岩佐一泉 照明:安藤真之助 美術:佐谷晃能 音楽:池田正義 監督:西河克己 

感想

■1962年6月の公開なので、『キューポラのある街』の後に封切られた、吉永&浜田のコンビ作。もともとは原作通りに『寒い朝』のタイトルだったけど、公開時期が初夏なので題名を変更したらしい。しかし、お話自体に「寒い朝」感が皆無で、ちっとも曲想と合っていないぞ。

■とにかく、いくらなんでも微温的に過ぎるドラマで、プチブルの母&娘の家庭と父&ムスコの家庭の子どもたち(吉永&浜田)がラブラブなので、両親(高峰三枝子金子信雄!!)もくっつけちゃえと思ったけど、実際に大人どうしが接近すると不潔な気がして、二人で反抗の家出を試みるという、ホントにどうでもいいお話を、そのとおりに池田一朗が脚本化した、どうにもならない映画。吉永&浜田は高校3年生だけど、さすがに言動が稚すぎるよね。石坂洋次郎センセイ、大丈夫か。

■なので、感想すら浮かばなくて書くこともないのだが、後半に登場する北林谷栄のおばあちゃん(といっても70歳手前!)演技だけは見ごたえがあって、吉永小百合に母親の女の人生の機微や自分自身の結婚生活の総括を語って聞かせる場面は、さすがの名演で、なかなか他の女優では成り立たない。

■映像的にも、明るく楽しい日活映画のテイストで、影のないフラットな照明で、これも特筆すべき点がない。やけに発色がいいのは東洋現像所の技術力の賜物だろうか。

■「寒い朝」という歌は名作だと思うのだけど、全く映画の中で生きていなくて、翌年に公開された野村孝の佳作『いつでも夢を』の方がずっと適切に使用されているし、夜学の帰りに仲間で合唱する場面は、ちょっとした名シーンだった。吉永&浜田の純愛コンビはブルジョア家庭劇は似合わなくて、やっぱり貧乏な勤労学生を演じている方がずっとしっくり来る。プチブル家庭劇は東宝や松竹に任せたほうがいいよね。

参考

maricozy.hatenablog.jp
名曲「寒い朝」は翌年のこの映画でも再使用された。やっぱりこういうシチュエーションで歌われるべき歌だと、日活も考え直したのだろう。
maricozy.hatenablog.jp

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