基本情報
Gorillas in the Mist ★★★
1988 ヴィスタサイズ 129分 @DVD
感想
■久しぶりに再見。かなり面白い映画なんだけど、肝心のことが何も描かれないという変な映画。霊長類学者のダイアン・フォッシーが、そもそもいつ学者になったのかすら描かれない。作業療法士で、霊長類の専門家じゃないけど古生物学者のリーキー教授に頼み込んで、マウンテンゴリラの生息地で個体数調査に励むまではいいとして、史実ではその後ちゃんと勉強して学者になっているのだけど、そんなエピソードはあっさり割愛。ほとんど女ムツゴロウさん状態で、ゴリラ好き好きという”野生ふれあいの旅”と化している。
■しかし、メイキングを観ると、本作は一種の再現ドラマであることがわかる。スタッフは物語の舞台であるルワンダのカリソケ研究センターに実際に撮影クルーを派遣し、マウンテンゴリラとの交流を描く場面は、さらに精選してスタッフ、キャストあわせて6人という小規模チームで撮影を行ったという。撮影監督のジョン・シールはこの映画に必要なのは筋肉だ!と豪語する。実際のマウンテンゴリラとシガニー・ウィーバーが触れ合う場面も、ドキュメンタルな撮影が行われていて、そのスリリングさがこの映画の一番の見所となっている。
■もちろん、リック・ベイカーの特殊メイクで人間が変身したゴリラも登場して、いかにも危険な場面はシェパートンスタジオで撮影もされているが、ロケとの繋が巧妙なので気にならない。特殊造形でも、そのあたりに小虫でも飛ばしておけば、一気にリアルに見えるからね。
■マウンテンゴリラの密猟に業を煮やした彼女は徐々に武装化し、私兵を持つまでになり、ゴリラの密猟で生計を立てる少数民族と激しく対立してゆく。もともと彼女の生前から映画化企画があったところに、本人が虐殺されるという悲惨な事件で人生が閉ざされてしまったという経緯がある。暴力に対して暴力を行使するとどうなるのか、という典型的な出来事であって、自業自得とも見えてしまう。
■ちなみに霊長類学者で元京大総長の山極寿一は、2年間現地でダイアン・フォッシーの実地指導を受けたらしい。つまり、ゴリラの保護のためなら私設軍隊による有形力の行使も辞さないという実力行使の考え方を、どうもダイアン・フォッシーから受け継いだらしいのだ。ということは、ダイアン・フォッシーの非業の死にも学んでいるはずだが、京都市民としては些か腑に落ちないところだ。(奥歯に物が挟まったような言い方でスマン)