インテリア ★★★☆

INTERIORS
1978 ヴィスタサイズ 93分
DVD

インテリア [DVD]
ウッディ・アレンのユーモア抜きの悲観性や皮肉さを、冷え冷えとした辛気臭いドラマとして展開した映画なので、どうなることかと思っていると、ちょうど中盤に俗物ながら生命力溢れる女性としてモーリン・ステイプルトンが登場してからドラマの骨格が明確になり、テーマも際立ち、俄然面白くなってくる。
■映画撮影の巨匠ゴードン・ウィリスの全盛期で、最近のアメリカ映画ではなかなかお目にかかれない静的で深みのある絵画的ともいえるユニークなルックを実現し、近寄りがたいような閉鎖的な均衡感を映像で見せてしまう。それはこのドラマの核である母親(ジェラルディン・ペイジ)が現実世界に投影しようとした内的世界そのものでもある。この映画の核心は、精神の均衡を崩したこの母親の呪縛をその家族たちが脱してゆく過程にある。
■母親譲りの才能を持ちながら同じように精神的な危機感を抱える長女(ダイアン・キートン)と、母親を崇拝しながら才能には恵まれず長女に嫉妬し、平凡な生き方に埋没することを拒む未熟な次女(メアリー・ベス・ハート)を中心に三姉妹の物語を綴った文芸映画調の演出だが、正直なところもっと上手い作り方もあっただろう。ウッディ・アレンの初のシリアスドラマということで、かなり気負った部分が目に付き、余裕が感じられないが、その構えた緊張感が母親の危うさの表現として感知できるので、独特の魅力となっている。三姉妹が海を見やるラストシーンのグラフィカルなカットなど、ゴードン・ウィリスならでは(?)のカッコいいカットも豊富な、硬質な家族劇である。93分というのも、ジャストサイズ。2時間だと辛くて観ていられない。

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