オタク帝王の心は鬼!『さようなら全てのエヴァンゲリオン~庵野秀明の1214日~』

NHKで放映された『さようなら全てのエヴァンゲリオン庵野秀明の1214日~』をやっと観ましたよ。

■職業人として、映画人としてのいろいろ興味深い教訓や反面教師ぶりを堪能しました。最初ははっきりとした指示を出さないで、スタッフの提案にこれじゃない、違うと散々ダメ出しをして、やっと最終的に自分で作業し始める。で、結局自分でやらないとOKにならない。

■アニメの茶の間シーンのアングルを探るために役者を使ってモーションキャプチャーの装備を用意して、スタッフにあらゆるアングルを探らせるけど、結局は自分でキャメラを持ってステージに入る。はじめから言ってくれればもっと効率的に作れるのにと、当然スタッフはボヤくけど、最終的に出来上がったものが凄いのになるので付き合う。天才にしか許されない演出法だし、大バジェットありきの贅沢な手法。

■第三村のアングルを探るために三池敏夫がミニチュアセットを作って、建物や電柱の配置について散々ダメ出しをして、自分で建物を持って並べ始める。このあたりは、円谷特撮の方法論と似たところがあって、特大ミニチュアセットに入ってからアングルを決めるという手法に倣ったものだろう。アニメ畑ならではのことだろうが、とにかくアングルありきという演出らしい。

■取材と続けるNHK若い女性ディレクターにもダメ出しを始め、自分ばっかり撮ってもつまらないよ、困っているスタッフの表情を撮れよ、検討中のミニチュア舐めで撮るんだよ、外の暴風のj情景を撮っておいてインサートで使えばとか。

■何度かの欝では自死も考えたけど、血を吐くような艱難辛苦の果に、自分のすべてを注ぎ込んだエヴァンゲリオンにエンドマークを打つことができた。明けない夜はない。最終的にそういう前向きな結論で終わるけど、並み居る同年輩のオタクたちのなかで飛び抜けた才能と強運に恵まれた極め付きの特異事例のことなので、ホントはわれわれのような才能も強運も持たない凡人にはあまり参考にならなし、どちらかといえば極めて珍しい珍獣を愛玩するような気分で観てしまうのが正直なところ。その意味では非常におもしろいドキュメンタリーだった。

■ちなみに管理人は『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』はいまだに観てません。新劇場版第二作で挫折しました。アニメ技術の凄さはわかるけど、やたらとキャメラがぐるぐる動き回って落ち着かないし、さすがにどこを面白がれば良いのか把握し難いドラマで、どんな普遍性があるのか腑に落ちないままなのです。
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