ジュラシック・ワールド ★★★★☆

Jurassic World
2015 変形スコープサイズ 125分
イオンシネマ京都桂川

■正直、観なくていいやと思っていたのだが、たまたま時間が空いたので暇つぶしに見ておこうかと出かけたところ、意外や意外、大変面白く、痛快な恐竜活劇でした。大満足で、ジュラシック・パークはこうあるべしという面白要素を全てぶち込んだ印象の大盤振る舞い。

■しかし、CGの分量は意外に少なく、最近のハリウッド映画に多いCGアニメ垂れ流し型の大作映画ではない。そのかわり、CG恐竜の見せ方がかなり上手いので、ここぞというメリハリの効いた使い方がされている。個々の演出についてはスピルバーグのような天才は期待できないが、非常に有能な職人監督である。コリン・トレボロウという人は、意外に芝居の見せ場がよく分かった人で、恐竜スターの扱いがまことにそつが無い。恐竜スターを生かしてナンボというこの映画の趣旨を正確に理解している。特に本作ではほとんど怪獣に近いハイブリッド恐竜を登場させるだけでワクワク感は高まるのに、さらに加えてシリーズの顔ともいうべきラプター達と人間が心を通わせて巨大な新怪獣に立ち向かうという夢のような趣向が盛られている。クリス・プラットラプターたちがジャングルに探索に出かける場面は、もう涙が止まらないほどの名場面。

■さらに本作が成功したのは、主演の二人のキャラクター造形によるところが大きい。スピルバーグの映画は主演二人が学者で、しかもサム・ニールローラ・ダーンという華の無いカップルでコメディ要素が弾けないのが残念だったが、本作はクリス・プラットのタフガイぶりや恐竜を手なずけるムツゴロウさん精神が好感触だし、相手役のブライス・ダラス・ハワードは何故かハイヒールのままでジャングルを疾走して、最後までハイヒールを脱ごうとしない変なこだわり演出が絶妙な可笑しさ。多分、このハイヒールは恐竜たちの竜脚を人間の女が引き継いでいるという意味で、恐竜と人間は引き離された存在ではないことを暗示していると思うのだが、ジュラシック・ワールドの官僚的な管理者が恐竜と心を通わせてゆくところに動物好きにはたまらんドラマ性がある。その構成はありきたりだが、監督によるブライス・ダラス・ハワードの演出に妙味がある。本作は敢えてフィルム撮影で、しかも画角がヴィスタスコープサイズの中間という技術的なこだわりもユニーク。スーパー35ミリがメインで、一部65ミリで撮影したそう。

■とにかく最後の最後までツイストのきいたアクション演出が的確で、ついにあの恐竜スターが登場する場面なども、もう感涙、感涙、なんというケレン味、これぞスター映画の醍醐味。

■本作の作者は絶対『怪獣総進撃』『三大怪獣地球最大の決戦』とか平成ガメラを観ているはずだけど、ケレン味の演出はオリジナルを超えているかも。


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