あなた童貞なの?雨に濡れるシェアハウスの娘たち『雨の中に消えて』

基本情報

雨の中に消えて ★★★
1963 スコープサイズ 100分 @アマプラ
企画:水の江滝子 原作:石坂洋次郎 脚本:池田一朗、西河克巳 撮影:横山実 照明:河野愛三 美術:佐谷晃能 音楽:池田正義 監督:西河克巳

感想

■『キューポラのある街』の女子中学生ジュン役で日本中の若者の琴線を刺激しまくった吉永小百合だが、早くもその翌年には、女子大生に成長し、女ともだちとシェアハウスに住み、バイト仲間の男子大学生に「あんた童貞なの?」と訊くから、油断もすきもない。

■シェアハウスといっても、故郷から上京した娘たちがお寺の離れを借りて同居しているだけですけどね。吉永小百合には高橋英樹との恋愛があり、笹森礼子には推理小説家との精神的な不倫があり、十朱幸代は遭難しかけた雪山で教師と結ばれた記憶が消しがたくある。それぞれの恋愛模様石坂洋次郎お得意の闊達な会話劇として描く。吉永と高橋が選挙事務所のバイトに行って経験するセクハラ場面は、完全にコメディ狙いなので、どうなることかと思っていると、終盤に向けてちゃんと各エピソードが決着してゆく。選挙事務所には伊藤雄之助轟夕起子の候補者夫婦がいて、伊藤雄之助は完全に横山ノック状態で小百合に卑猥なことを言ったり、お尻を触ったりするわけ。まあ、当時の光景だろうけど、一応そうしたセクハラに対すてはいけないことという認識があり、轟夕起子が主となるカウンターも描かれている。

■一方、推理作家を演じる下元勉が好演で、工事現場の飯場で結ばれた女房(菅井きん好演!)を殺す計画を小説のプロットにダブらせて語る熱海のホテルの場面は、さすがに薄暗い変態じみた情熱を演じきって、見事なもの。俳優下元勉を見直しました。

■十朱幸代のエピソードはなかなか進展しないなあと思っていると、終盤に山田吾一が上京して、圧巻な展開を見せる。雪山での出来事を互いに抱えながら、結婚が決まった山田が、フィアンセの女教師から過去の成り行きに決着をつけてこいと暗に命じられて十朱のものを尋ねるという微妙なシチュエーションのなかで、圧倒的な科白劇が展開する。つまり、あの雪山の出来事は互いに無かったという認識を共有して、はっきりと過去を清算して来いと、フィアンセに送り出された男なわけですね、山田吾一は。

■この場面は、どこまで小説通りなのか不明だが、まるで舞台劇を観るようなテンションで、西河克巳の演出も長廻しを選択する。この場面の台詞は心理描写を全部説明してしまうものだが、その描写と説明があまりにピタピタと男女の心理的な機微を正確に指し示すものなので、圧倒される。西河克巳の演出侮りがたし。

■それに比べると、高橋英樹全学連の闘士(体育会系右翼にしか見えないけど!)を演じる吉永とのエピソードは実に可愛いもので、従来の青春映画の範疇を超えない。当たり前だけど。特に長身の高橋と吉永が並ぶと、吉永の小柄ぶりが際立つ。浜田光夫とのコンビではそうした違和感がまったくないので、高橋との対比では、いくら吉永がおませなことを言っても、未熟で子供っぽく見えてしまうことになる。これが浜田光夫だと、吉永のそうした奔放さに振り回される構図になる。

■ラストの高橋と吉永の雨の中でのキスシーンも、日活青春映画の大原則にそってストレートには描かず、横山実のマジカルなキャメラワークで上手に傘で隠しながら流麗に描く。ホントにマジカルでトリッキーなので吃驚した。演出的にもキャメラワーク的にも意外に見どころの多い良作。
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