感想
■日活の都会派喜劇で裕次郎主演のA面作品のはずなんだけど、まったく冴えなくて、いったいどこが面白いのか企画の狙いを察しかねる。企画は坂上静翁で原作モノなので一応文芸路線なんだけど、どうみても失敗作。
■可憐な野の花、芦川いづみがキャリアガールでガチガチのメガネっ娘(当然黒縁!)を早口で演じきるのが見どころではあり、確かにコメディエンヌとしても見どころがあるのだが、お話が全く面白くないので、救われない。こうした都会派喜劇なら、当時の東宝のほうが垢抜けているし、素直にゴージャスで楽しいよね。文明批判的な視点も上滑りなので、テーマ的にも冴えないし、終盤がヤクザとのイザコザに終止するのも竜頭蛇尾で、もっと面白くなりそうな素材が不完全燃焼に終わった。これ、山田信夫&蔵原惟繕のコンビならもっとヴィヴィッドな喜劇になったかも。
■おまけに当時日活専属だった中原早苗が何故かガングロ娘で登場して、話をかき回すけど、これもまたちっとも面白くない。お馴染みのヒステリー体質でコメディ要員だが、どうも中平康って、作品によって波があるのかな。というか、結構ハズレが多い印象。本家ヌーベル・バーグに大影響を与えた鬼才とか俊英というイメージだったけど、実際の打率はかなり低いのかも。こうした素材なら、東宝で岡本喜八が撮れば傑作が生まれた可能性があるよな。
■ちなみに、スクリーン・プロセスが大々的に使われるのが、当時の日活A面映画の特徴で、これを金田啓治がコーディネートしていた模様だ。日活映画のもうひとつの重要路線、低予算のモノクロ撮影でリアリズム志向のB面映画では、基本的にスクリーン・プロセスは使われず、現地でのロケ撮影を旨とする。スクリーン・プロセスは日活スターにだけ許された飛び道具だったのだ。
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参考
中平康と裕次郎って、『狂った果実』が歴史的な傑作だったけど、それ以外は意外と良いのがないのだ。『紅の翼』が例外的に上出来だったけど。
maricozy.hatenablog.jp
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