グランド・ジョー ★★★

JOE
2013 スコープサイズ 118分
APV

■どうしても『グラン・トリノ』を連想してしまうし、それと比べるとカタルシスがないすっきりしない映画なので、妙に通好みの映画という印象。監督はデヴィッド・ゴードン・グリーンで、この後、サンドラ・ブロックの映画も撮っているが、非常にリアル志向の演出で、ニコラス・ケイジ主演のVシネ的なアクション映画をイメージしていると完全に裏切られる。『ディア・ハンター』みたいなタッチで、南部の極貧生活が描かれる。まるで西部開拓時代の無法地帯のような人間関係がリアルな現実として描かれる。

■リアル志向は少年を虐待する父親の人間像、配役、演出に特に強烈に表れていて、底抜けに最低な人間として描かれるが、演じるゲイリー・ポールターという人は実際にホームレスらしい。しかも、その後ホームレスに戻って、死んでいるのが発見されたという。まあ、これ以上に自堕落で破滅的な人格を表現することは難しいだろうと思われるほど、徹底的にひどい父親を演じる。その圧倒的な荒廃感は確かに凄い。その最期の無残さも含めて、ニコラス・ケイジの演技よりこの男の生きざまの凄まじさが強烈に記憶に残る。

■デビッド・ゴードン・グリーンのリアル志向は徹底しており、コンビのキャメラマンであるティム・オアーとともに、アベイラブルライティングで徹底的に暗く、沈んだ画づくりを行っている。暗い室内では表情も読み取れないルックをそのままで押し通す。だいたい映画で汚い室内や外景を描いても、フォトジェニックになってしまいがちだが、本作の撮影はその薄汚さをよくリアルに捉えている。デヴィッド・ゴードン・グリーンという監督、相当な頑固者とみた。サンドラ・ブロックの映画も観ないとな。


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