おおかみこどもの雨と雪 ★★★

おおかみこどもの雨と雪 BD(本編1枚+特典ディスク1枚) [Blu-ray]

おおかみこどもの雨と雪
2012 ヴィスタサイズ 118分
DVD
脚本■奥寺佐渡子、細田守
音楽■高木正勝 作画監督山下高明
美術監督■大野広司 美術設定■上條安里
監督■細田守

■アニメ映像としては、技術的にもセンス的にも素晴らしい達成なのはわかる。雨や雪や風といった自然の営みを、CGを繊細な手つきで取り入れることで、非常にハイセンスなリアリティを獲得している。それは間違いないのだが、ドラマがあまりにゆるふわタッチなので、大人が納得できる話にはなっていない。もちろん、ファンタジーとして作られているのは承知のうえで、でも絵柄は非常にリアル志向であり、そのアンバランスさが非常に居心地の悪さを生んでいる。

■本作はある意味で『となりのトトロ』みたいな映画で、ドラマらしいドラマは無い。山村の住民とのやりとりだけでももう少しリアルな人間を描写することができるはずだが、そうしない。菅原文太なんて何のために出てきたのか意味不明だし、取り巻きの農民たちも単に気の良い、都合の良い脇役に過ぎない。そこには何の衝突も葛藤もない。終盤の雪と雨のそれぞれの選択や、特に雪が正体を告白する場面など、細田守らしい繊細な心理描写が冴えており、ついつい気持ちは動いてしまうのだが、それ以上のものは無かった気がする。そもそもあの母親は雨を探し回る間、雪のことは少しも気にならなかったのか、と変なことが気になって集中できない。さらに、この映画、長すぎだ。ドラマが薄いのに、『となりのトトロ』の何割り増しのランニングタイムになっているのか。

■ファンタジーならファンタジーらしく寓話としてパッケージすればいいのだが、ルックとか世界観は変にリアル志向なので、その割りにリアルなえぐ味は無いし、という印象になってしまうのは、本当に困ったもので、居心地が悪い。

■製作は日本テレビスタジオ地図マッドハウスほか、企画・制作はスタジオ地図芸術文化振興基金から5千万円の補助を受けて製作され、約40億円の興収をあげた。


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