ソムニア 悪夢の少年 ★★★

Before I Wake
2016 スコープサイズ 97分
DVD

■事故で亡くなった子供の代わりに(!)養子をもらった若夫婦は、その少年が夢を現実化する能力があることを知る。そしてある夜、死んだはずの息子が姿を現す・・・

■『オキュラス怨霊鏡』で才能を見せたマイク・フラナガンが脚本、監督、編集を務めるダーク・ファンタジー。ホラー的なコケ脅し場面もぬかりなく盛り込みながら、息子を事故で亡くした若夫婦と眠って夢を見るとそれが現実化する超能力を持つ孤児が辿る戦慄の事件と心の交流を的確に描く。

■かなり複雑な設定と、ヒロインの心理描写にも手間がかかるお話だが、マイク・フラナガンの脚本はそつがない。養子を愛するのではなく、亡き息子を呼び出すための道具にしはじめる妻の妄執、それを理性的に批判する夫の劇的な確執のあたりは、マイク・フラナガンらしい作劇で、全体にジャンル映画をはみ出す丁寧な描写となっている。

■終盤は養子の実の母を親を探す謎解きに移行し、さすがに捻りのきいた真相が明らかになる。時間配分も含めてジャンル映画としては上出来の部類だ。少年と実母の哀しい過去が明らかになり、ヒロインは養子を息子として受け入れる。純粋な怪奇映画ではなく、ファンタジーであることが惜しいのだが、企画意図がそもそもダーク・ファンタジーだから、それは言っても仕方ない。『オキュラス』では過去に囚われたヒロインが悲惨な最期を遂げるが、本作ではちゃんとハッピーエンドを迎えることができる。

■本作のケイト・ボスワースは『オキュラス』のカレン・ギランに比べると憑かれた感じが弱い。そこはやっぱり演技力の差を感じたなあ。でもマイク・フラナガンには今後も期待できそうだ。

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