オキュラス 怨霊鏡 ★★★★


Oculus
2014 スコープサイズ 103分
DVD

■父親を撃ち殺し精神病院に収容されていた弟が退院する。だが、姉は事件の原因である呪われた鏡を発見したから、鏡の魔力を証明する実験を行い、殺人の汚名を雪ごうと持ち掛ける・・・

マイク・フラナガン監督の自主短編を長編化した怪奇映画の逸品。パッチものっぽい題名だが、これは本物の怪奇映画。死霊館ワールドがホラー活劇であるのに対し、こちらはあくまでガチガチにハードに邪悪な存在の悪意を抽出する。2002年にラッセル家に起こった家族崩壊の惨劇と2013年の姉弟の心霊的実験の顛末が並行して描かれる。さらに、呪われた鏡の邪悪な意志の発動ぶりが具体的に描かれる。死霊館ワールドとは異なり、悪魔そのものが登場したりはしないし、中盤までは幽霊的なものすらほとんど登場せず、じわじわと真綿で首を絞めるような嫌なサスペンスが継続する。しかも、マイク・フラナガンという監督、非常にセンスが良いし、上手いのだ。

■何が上手いといって、前半の見せ場となる姉弟心理的な対立を見せるまるで舞台劇のような舌戦の場面。特に主演のカレン・ギランがいかにもモデルっぽい美人ながら、狂っているのは弟ではなく姉の方ではと感じさせる憑かれたような演技が圧巻。2002年の姉弟を演じる子役も妙に上手くて、配役が成功しているのもあるが、監督の演技指導がしっかりしているに違いない。実際中盤までは派手な怪異は起こらず、二人の心理劇と舌戦でぐいぐい見せるので、舞台劇の映画化かと思ったくらいだ。それだけ脚本がよく書けているということ。台詞劇だけで中盤まで引っ張るところにこの監督の力量を見た。

■終盤はさすがに現在と過去が融合して惨劇が重なり合うことになるのだが、ショック演出よりも人間に幻覚を見せて精神を操る魔鏡の邪悪さに戦慄が走る作りになっていて、あらかじめ予見されていた悲劇に向けて避けられない運命を転がり落ちてゆく二人の姿が痛々しく胸に迫るので、これ以上ない悲惨な最期なのに、妙な清々しささえ感じる。非常に後味の悪いラストのはずなのに、これは何故だろう。

■いざという時には鏡を破壊するために、こともあろうに天井から船の錨を吊り下げた特殊装置を披露するカレン・ギラン、最高。実はこの場面でこれは傑作と確信したのだ。ロジャー・コーマンの『恐怖の振子』に迫るその意気や良し。

予告編

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