シーザーとクレオパトラ ★★★

Caesar and Cleopatra
1945 スタンダードサイズ 138分
DVD

シーザーとクレオパトラ EMD-10002 [DVD]
■バーナード・ショウの有名戯曲を映画化した超大作。当時のイギリス映画界の大御所キャメラマンを結集してテクニカラーで撮りあげた総天然色スペクタクル。と思いきや、まったくスペクタクルではなく、合戦シーンはオーバーラップで点描されるだけで、原作戯曲に忠実に台詞劇として映画化されている。ただ、その舞台装置のスケールのでかさとハリウッド映画とは異なるしっかりした照明、美術の質感の高さはさすがイギリス映画。

■非常に奇妙なお話で、クレオパトラ凄いとかクレオパトラ哀れとかクレオパトラの恋愛を描くのではなく、あくまで主眼はシーザーのカリスマ性を描くにある。シーザーの寵愛を受けて少女のクレオパトラは成長して、いっぱしの女王気分に浸り、暗殺を指示したりして女らしい奸智を見せるが、肝心なところでは男たちの戦闘力に頼らざるを得ないという弱さを描くのが終盤の見せ場になる。絶世の美人ではあるが、老成したシーザーから見れば、所詮は女の仕業で男の思慮深さにの前では子供に過ぎないという描き方になっている。今の目で観ると政治的に間違っていると言われそうだが、実際そういうお話で、そういう映画である。

■なので、60年代スペクタクル史劇の味わいを求めるとガッカリするスペクタクル性の少ない映画だが、ドラマ性の妙味、人間描写の面白さはさすがの原作ものである。演出にもう少し映画的な工夫があってしかるべきだが、技術レベルの高さで救われている。クレオパトラの女官を演じたフローラ・ロブソンの怪演が凄いのだが、この女優、けっこう色んな映画で変な役を演じているイギリスの岸田今日子みたいな人。『北京の55日』では西太后を貫禄たっぷりに演じていたね。

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