『見知らぬ明日』

見知らぬ明日 (ハルキ文庫)

見知らぬ明日 (ハルキ文庫)

■上記のハルキ文庫版はすでに絶版らしく、入手不能なので、図書館で小松左京全集完全版を借りてきて、一気に読んだ。ハルキ文庫も再販すべきだ。
文化大革命期の、秘密のベールに覆われた中国、さらにその深奥である新疆ウィグル自治区で軍と宇宙人との戦闘が始まるが、国際社会は真相が不明なまま、政治的な駆け引きを繰り返すという、ポリティカルフィクションを含む擬似イベントSF。終盤は少々尻切れトンボ感もあるが、その分余韻も深い。
■宇宙人の情報は最小限度で、間接的、断片的な情報だけで描かれるが、スペクタクルではなく、サスペンスとして成功している。いかにも東宝映画が喜びそうなお話なのだが、今の映像技術なら、十分映画化できる。ただし、ハリウッドでないと無理だろうが。アニメでもいいから映画化してほしいなあ。
■侵略者の拠点がついには富士山に築かれ、東京はゴーストタウンと化すのだが、このあたりの終末観は、なぜか黒沢清の「回路」を想起させる。「見知らぬ明日」というタイトルも、小説版「回路」の台詞を彷彿させる。まさか、黒沢清小松左京を参考にしているとは思えないが。