クレオパトラ ★★★☆

CLEOPATRA
1963 スコープサイズ 244分
DVD

■3時間映画どころか4時間を越える、名実ともに超大作と呼ぶに相応しい超大作中の超大作。それもそもはず、もともとは3時間映画×2本の企画として撮影されており、シーザー編、アントニー編で6時間に及ぶ前代未聞の"超"超大作だったのを、プロデューサー権限で2時間あまりカットされたという疵だらけの超大作なのだ。確かにお話の繋がりが悪いところがあり、そう言われれば確かに必要な場面がカットされているのだ。

■前半は性悪女に、あんたはアレキサンダー大王になれると唆されて、持病を押し、老骨に鞭打ってローマ帝国を我が物にしようと図ったばかりに暗殺されてしまうシーザーの物語。しかし、前半はまだまだ。本当に面白いのは後半のアントニー編なのだ。

アントニー編は、あんたはシーザーを超えろ!とクレオパトラに吹き込まれたばかりに、自分の本分を忘れ、兵たちとの信頼関係や軍人の誇りよりも、爛れた愛情に眼がくらんで、軍人としての全てを失ってしまう悲劇が描かれ、なかなか胸が痛い。アクチウムの海戦での敗走で決定的に踏み外し、その後はこれまで積み上げてきた軍人としての地位や名誉や誇りも地に落ち、ただ愛のためだけに無様に生きようとするが、誰からも軽蔑されて、俺は生きるのも死ぬのも不器用だったと嘆きながら自刃する様は非常に哀れ深いものがある。

今までは他人の夢ばかり追ってきたけど、これからは自分を夢を見たいと言い残して世を去るラストも、まるで舞台劇のような、よくできた名場面で、決して退屈で冗長な映画ではない。でも、クレオパトラ自身は、自分の人間性に大いに問題があることは、結局自覚していないのだ。シーザーにとっても、アントニーにとっても悲劇の種は彼女の人間性にあったのだ。

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