アナと雪の女王 ★★★☆

Frozen
2014 スコープサイズ 102分
DVD

■本年の国民的映画となった数奇なミュージカルCGアニメ。とにかく雪女郎に生まれついた姉エルサが独唱する「ありのままで」の楽曲が突出して傑作だったために、ストーリーラインも途中で変更せざるを無かったという、楽曲中心の構築がなされた本作は、やっぱり楽曲の魅力が全てを牽引しているだろう。実際、何度も聞き込むごとにメリハリの効いた劇的な楽曲が体にしみこんでいく感じがあり、いやあ傑作楽曲の威力の凄さを実感した。DVDが自宅にあると毎日でも繰り返し観てしまうもんなあ。
■ただ、ドラマとしてはかなり歪な構成となっていて、エルサが捕らえられてからの終幕の作劇は再考が必要だと感じる。一番の問題は、ドラマの解決に楽曲が絡まないことだ。せっかくミュージカル映画を観ているのに、一番のクライマックスがミュージカルでないというのは明確な欠陥だろう。しかも、ラストの舞台設定に魅力が乏しいし、展開のご都合主義にも閉口する。そもそも、エルサが氷の城に引っ込んでしまってからは彼女のドラマが無いのでそんなことになってしまうのだが、エルサを悪い魔女にできなかったことの弊害(葛藤の弱さ)がそこに現われている。積極的に悪として振舞うエルサの氷に閉ざされた心の改心こそが普通に考えればクライマックスになるはずなのに、彼女を悪役にできなかったせいで、アナが凍りついてしまうことになるのだが、作劇の歪と弱さがそこに露呈する。それでもミュージカルナンバーをぶつけて感覚的に納得させてしまえばよかったのに、それも無し。ドラマとしては正直、もう一息というできばえだ。
■しかし、まるで藤村の「破戒」の丑松のように(?)「ありのままで」を歌い上げるエルサの姿には心をわしづかみにされるし、それ以前に「生まれてはじめて」をアナとエルサが歌い交わす場面のこれぞミュージカルという正攻法の演出と楽曲の秀逸さで、もう既にガツンとやられているので、もう第一幕で傑作確定という感じなのだった。その後はお得意のアドベンチャー要素とコメディ要素も楽しいが、DVDで繰り返し観るのは、結局第一幕ばかりというのは事実だったりする。それにしても、エルサは『破戒』の市川雷蔵だよな。
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