モスラ
1961 スコープサイズ 106分
LD
脚本■関沢新一
撮影■小泉一 照明■高島利雄
美術■北猛夫、阿倍輝明 音楽■古関裕而
特技監督■円谷英二 監督■本多猪四郎
■古いLDを引っ張り出して観たのだが、非常に発色が良く、DVDも観てみたらこれも非常に渋くて綺麗な発色で感心した。これハイビジョンでリマスターするとこのフィルムの発色のルックが変わってしまうのではないか。ちょっとくすんだ感じの彩度の低めの発色がこの時代の東宝特撮のリアリティを支えている。後年、60年代後半に入るとフィルムの性質、あるいは製造メーカーが変わって、原色の発色が派手でベタッとした色調になってしまうので、東宝特撮の本編セットや特撮セットの質感が大きく雰囲気を変えてしまうことになる。個人的にはこの時代のイーストマンカラーの質感がベストだと思っている。
■とにかく本編の画を構成するのに監督が必要と言ったものはちゃんとそのとおり用意できますよという恵まれた環境下で本多演出がその持ち味を遺憾なく発揮した傑作。装置のスケール感、エキストラの人数といった部分で、やはり東宝特撮の頂点。円谷組が拘った夜の東京の町並みの再現がまた傑作で、自衛隊の行きかう東京の街角のミニチュア表現は独特のジオラマ感を生み出して、リアル以上の世界観を表現している。
■ラストの舞台設定の変更に絡むやり取りなどの大きな変更は監督の意向に関わらず製作サイドの采配によるところがほとんどで、そうした無茶な注文にも投げ出さず真面目に応えてくれる本多監督は得難い人材だったはずだが、翌年には製作陣からメロドラマに鞍替えすれば?と勧奨されてしまうのだから、ホントに会社組織って油断ならない。