みんなわが子 ★★★☆

独立プロ名画特選 みんなわが子 [DVD]

独立プロ名画特選 みんなわが子 [DVD]

  • 発売日: 2013/12/21
  • メディア: DVD
みんなわが子
1963 スコープサイズ 94分
DVD
原作:月光原小学校編「学童疎開の記録」(未来社刊)その他より
脚本■植草圭之助
撮影■井上莞 照明■森康
美術■岡田戸夢 音楽■池野成
監督■家城巳代治

■なんとなく日教組がスポンサーの教員と生徒の心の交流を描く良心的(教条的?)な映画かという先入観があって観ていなかったのだが、これ実際は農協がスポンサーなのだ。山本薩夫の『荷車の歌』に続く第二弾として製作されたそうだ。お話は太平洋戦争末期の疎開先での小学生たちのひもじい生活のあれこれを切なく描くもので、非常にリリカルな映画に仕上がっているので驚く。
■実際の戦時中の学童疎開の記録をもとに劇化されたもので、各エピソードは実際にあったものらしい。女生徒たちが風呂で花柳病に感染してしまうので、中原ひとみが風呂に入る姿勢について教える場面など、とても空想では思いつかない。劇映画だけど昔の日本人の生活の実感が記録されていて非常に勉強になる。
■そういえば家城巳代治の映画を観るのは初めてかもしれないが、今井正にも通じる叙情が感じられ、特に空腹に苛まれる人々のエピソードを切なく描くあたりは演出が押し付けがましくないので、つい泣かされてしまう。池野成が大映映画のときとはうって変わって、バロック調のリリカルな劇伴を付けていて、その曲想がこの映画の印象を大きく支えている。子供たちの喧嘩や、母親との面会、山奥への再疎開、町に残された子供の被災等々のエピソードが抑制された表現でしみじみと心に沁みる、非常にいい映画だ。
■つまみ食いをする生徒を叱っていた女教師が最後には農家の芋を率先して盗み食いするようになるエピソードなども非常にリアルで切ない。敗戦が決まった日、さぞかし子供たちは落ち込んでいるだろうと考える教師たちに対して、子供たちの祝祭的な大騒ぎが提示されるラストには、教条的な主義主張を超えた子供の心が結晶している。


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