ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館 ★★★☆

THE WOMAN IN BLACK
2012 スコープサイズ 95分
Tジョイ京都

■スーザン・ヒルの傑作怪奇小説の映画化で、製作がハマーフィルムというガチガチの本格的ゴシックホラー。監督のジェームズ・ワトキンスは知らないのだが、脚本のジェーン・ゴールドマンは『キック・アス』とか『X-MEN ファースト・ジェネレーション』等を書いた気鋭の人材だ。

■正直なところジェームズ・ワトキンスの恐怖演出はあまり先鋭的とは言えず、そりゃ中田秀夫とか清水崇のほうがよほど怖い。しかし、本作は実は恐怖映画ではなく、怪奇タッチのダーク・ファンタジーであって、そのつもりで見ると、ユニークな構成が際立ってくる。幽霊屋敷での怪異描写に冴えがなく、やたらとこけおどし演出が繰り返されると、普通なら白けるところだし、妙にのんびりとしていて、サスペンスが効いていないので、脚本のミスかと疑ったのだが、終盤になって、原作を改変した意味が明らかになり、含蓄の深いラストシーンでは、おおやられた!と納得させる、なかなか意欲的な怪奇映画なのだ。

■なにしろ肝心の黒衣の女すらはっきりとは写さないという念入りな映像設計にも恐れ入るが、黒衣の女に対する反対側の存在を設定したところに脚本の工夫があり、いかにもイギリス人らしい幽霊趣味が感じられる。ルイス・ギルバートの『月下の恋』とかジャック・ターナーの『Curse Of The Demon』などを想起させる奥ゆかしさがあり、いや、なかなかおっとりとしながらも、肝は外さず的確に作られた怪奇映画である。ある意味、通好みの怪奇映画といえるだろう。

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