力道山 ★★★☆

RIKIDOZAN
2004 スコープサイズ 149分
DVD

力道山 [Blu-ray]
韓国映画だからこそ描けた力道山の半生の物語。ではあるが、史実をもとにしたフィクションなので、いろいろと改変、単純化は施してある。そのおかげですこぶる面白い伝記映画になった。ほんとに梶原一騎の漫画みたいな映画なので、随所で力瘤が入りまくる痛快作だ。いきなり戦中の相撲部屋でのかわいがりから始まるなど、邦画では無理、無理。
■その後も一芝居うってヤクザの大物に取り入るとか、在日コリアンが成り上がってゆくために手段を選ばないギラギラした生き方が包み隠さず描かれるし、粗暴な性癖から相撲界でもプロレス界でも浮いてしまう人間性の瑕疵まで、その人間臭さを隠そうとしない。決して力道山を美化していない点は、非常に立派な態度だと思う。よくぞそこまで描いたと感心する。その筆致は、ほんとに東映の実録やくざ映画みたいな感じ。でも、撮影がキム・ヒョングなので、映像のルックはこってりとゴージャスなのだ。フルショットからクレーンで力道山に寄ってゆくキャメラワークが多いが、非常にこれが演劇的な見得を切る効果を生んでいて圧巻。
■後半の事態が悪いほうへ悪いほうへと転がってゆくあたりの積み重ねは、こうした実録映画の醍醐味。力道山の居場所がなくなってゆく様子が切々と語られる。「昭和の巌流島」対決なるものを初めて知った。
■ちゃんと日本語で演じる主演のソル・ギョングの取り組みも凄いし、対する藤竜也の貫禄と柔軟な芝居は圧巻。妻を演じる中谷美紀はどうも実在感が乏しく、これは脚本段階の無理だろう。
■ただ、ラストの刺殺事件は事実単純な事故的なもので裏がないようなので、ドラマ的にはいまひとつ盛り上がらない。「昭和の巌流島」事件への反発でやくざが命を狙ったというような筋立てがあれば確かに面白いのだが、そこまでは脚色していないのだ。

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