「小松左京自伝―実存を求めて」

■少し前に読了した本だが、とりあえず備忘を。さすがに小松左京も病気や年齢のため、話にまとまりが無く、インタビューの構成には苦労が偲ばれるのだが、ほとんどの著作の根底には太平洋戦争の敗戦体験が埋まっていることだけはよく分かったので、読んだ値打ちはあった。

■「さよならジュピター」のラストにしても、描かれているのは太平洋戦争に対する作者の思いなのであって、「日本沈没」の日本列島を脱出しようとするぼろぼろの人々の群れは、たとえば満州国を決死の思いで脱出して日本へ向かう難民の群れの姿にそのまま重なり合うわけだ。

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