アジョシ ★★★☆

THE MAN FROM NOWHERER
2011 スコープサイズ 119分
T-JOY京都

■麻薬取引のいざこざに巻き込まれて拉致された少女を奪回するために立ち上がったのは、隣の質屋のおっさんだった、しかもそのおっさんは超イケメンで、さらに元特殊工作員だった、という心躍るありえない妄想活劇。

■最近では、どうしても「96時間」を思い出してしまうが、こちらの方が脚本は良くできている。2時間弱の映画だが、悪役の描きこみが念入りで、韓国の犯罪集団と中国人マフィアの確執が炙り出されるあたりが興味深く面白い。悪役のえげつない造形では完全に「96時間」を超えている。少女の趣味をネイルアートとしたあたりの工夫も上手く、脚本兼監督のイ・ジョンボムはアクション映画をよくわかっている。

■隣のおじさんをウォンビンが演じ、長すぎる手足を駆使して眼にもとまらぬ超絶アクションを見せる。惜しむらくは、ハリウッド流の切り刻む編集のせいで、せっかくの体技が見えないことだ。もっとじっくりと見せればいいのに。

■ライバルのベトナム人殺し屋をタナヨン・ウォンタラクンというタイ人俳優が演じるが、クライマックスの少女との交感のシーンは実に素晴らしい。説明台詞は一切なしで、情感をだしておいて、クライマックスの死闘を戦い抜いた潔さは、監督の活劇魂の正しさを証明している。

■最後には、どうぞここで泣いてくださいという泣き代(しろ)が用意されているのは、いかにもヒット狙いで興ざめだが、まあ、これだけ堪能させてくれれば、文句を言う気がしないよ。

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