スリザー ★★★☆

スリザー [Blu-ray]

スリザー [Blu-ray]

  • ネイサン・フィリオン
Amazon

SLITHER
2006 ヴィスタサイズ 96分
DVD

■宇宙から飛来した異生物が人間に取り付いて、アメリカの片田舎の町を破滅させるまでを描いたSFホラー映画で、80年代のB級ホラー映画に熱烈なオマージュを捧げた愛すべき映画だ。なかでもスチュアート・ゴードンに対する敬愛を隠そうとしないあたりが、もう泣けてくる。特に「フロム・ビヨンド」の直接的影響は絶大だ。

■貧乏ゆえに愛なき結婚をしたヒロイン(エリザベス・バンクス)とその夫(あの「ヘンリー」のマイケル・ルーカー!)の夫婦の物語として構成されている点がユニークで、エイリアンにとりつかれて怪物化しながら心通わぬ妻への思慕を膨張させてゆく姿は、奇妙な感動を誘う。

■適者生存というのがこの映画のモチーフで、よくもこれだけダメそうな顔を集めたものだと感心する不細工な村人たちが全滅して、映画的に見栄えのする顔をもつものだけが生き残るという身も蓋もない差別主義がそれに呼応しているのだが、監督の心情は、実は不適者の烙印を押されて滅びてゆく者たちのほうに寄り添っている。それは、ヒロインの夫に対する入念な演出に明白に表れており、何故かよくできた夫婦映画、家庭映画でもある。

■視覚効果としては、CGよりも特殊メイク、特殊造形にこだわった映像作りが反時代的で素晴らしく、信頼に値する。また、農場で怪物化した男を待ち伏せする場面から、牛小屋へと至る場面のサスペンス演出は圧巻の名場面である。人体唐竹割のCG表現にも感動する。脚本、監督のジェームズ・ガンという男、この後新作は撮っていないが、勿体ない逸材だぞ。

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