ファースター 怒りの銃弾 ★★★☆

FASTER
2011 スコープサイズ 98分
TJOY京都(SC2)

■10年の刑期を終え、兄を殺した者たちへの復讐に燃える男(ドウェイン・ジョンソン)、何者かの指示で彼を狙う殺し屋(オリヴァー・ジャクソン=コーエン)、さらに事件を追うダメ刑事(ビリー・ボブ・ソーントン)のそれぞれの魂の彷徨を描いたB級アクション映画の快作。

■典型的なB級痛快アクション映画なのだが、監督が「ザ・ダイバー」のジョージ・ティルマン・Jrなので、非常に武骨でアメリカンな乾いたタッチの映画になっている。何しろ、主演がドウェイン・ジョンソンなので、めそめそしたメロドラマなど入り込む余地はないのだ。VFXやデジタルエフェクトの利用も最小限で、マイケル・グレイディのフィルム撮影の旨味も堪能できる。ああ、映画を観たなあという愉悦に浸ることができる、今時珍しい痛快作だ。

■兄を殺した男たちへの復讐に燃える、まるでターミネーターのような巨漢ドウェイン・ジョンソンが許しの意味を知るというのがメインのドラマだが、彼の復讐に完璧な殺し屋の美を見出して、彼を超えようとする若者が絡むというのが脚本の新工夫で、ユニークな作風になっている。この若者の設定はどちらかと言えば漫画的であまり説得力を持たないが、一方のダメ刑事のビリー・ボブのくたびれ加減がリアリティを放ち、B級アクションに普遍性と批評性をもたらしている。

■ラストにはちゃんと捻りが用意されているが、少々やり過ぎというか、趣向が古い気はする。それでも、今時珍しい正攻法のアクション映画で、ドウェイン・ジョンソンの外見上のマッチョイズムを超えた今日性とアクション映画の醍醐味を味わわせてくれる貴重な映画だ。

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