大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇 ★★★

大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇
2011 ヴィスタサイズ 121分
TJOY京都(SC5)
原作■前田司郎 脚本■前田司郎
撮影■小林元 照明■堀直之
美術■禪洲幸久 音楽■蔦谷好位置
監督■本田隆一

■新婚なのに既に倦怠期の若夫婦が、行方不明の電子ジャーの行方を捜して、なぜか地獄旅行に出向く羽目に・・・

■期待の新鋭前田司郎の初映画作品、ということで、額面通り1800円を払って観に行ったわけだが、どう見てもデジタルビデオ撮影の低予算映画なので、正直なところ、フィルム撮影でない日本映画は料金を下げるべきだという持論を再確認した感じになってしまったのだが、まあ、奇妙なファンタジーとしてはギリギリ合格ラインというところだろう。正直なところNHKの「お買い物」とか「迷子」といったドラマのほうがよほどレベルは高い。脚本も演出もね。前田司郎ファンとしては独特の脱力ギャグに笑わされはするが、普通の観客に薦める気にはならないなあ。

■何故か日本映画の顔になってしまった樹木希林柄本明が出てくるのだが、一番の儲け役は片桐はいりだろう。テレビ、映画よりも演劇界での活躍が秀でているらしい彼女だが、ここでの配役は独壇場という感じで、樹木希林とのコンビはある意味最強だ。

■前田司郎の劇世界は、こうしたファンタジーにしたところで、ヘタウマな感じで映像化しないと意図が伝わりにくいだろうから、今回のVFXは少々中途半端という気もするのだ。加減が難しいところなので、気の毒という気はするが。

■ドラマとしては、若夫婦が東南アジアに旅行に出かけて、思いがけない体験をするうちに、倦怠期を脱して、新鮮な気持ちを取り戻しましたという、単純な、ありそうな話を、舞台を地獄に置き換えたという趣向で、ちゃんと納得はできるようになっているのは、原作者本人が脚本化した成果だろう。正直、もっと破綻しているかとおもいきや、案外まともな映画になっている。前田司郎の発想には、浦沢義雄との近親性が感じられるので、特撮者は是非観るべき。

■地獄の青い人に扮する橋本愛は、「告白」のあの美少女だが、ここではアバター状態の青顔でも圧倒的な美形ぶりを発揮する。橋本愛主演のアイドル映画を切に希望する。

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