山桜 ★★★☆

山桜
2008 ヴィスタサイズ 99分
DVD
原作■藤沢周平 脚本■飯田健三郎長谷川康夫
撮影■喜久村徳章 照明■長田達也
美術■金田克美 音楽■四家卯大 視覚効果■松本肇
監督■篠原哲雄

■粗製乱造の気もある篠原哲雄だが、時々ほんとに良い映画を撮ってくれるから油断がならない。本作は当り、もう一歩踏み込めば大当たりになった可能性がある佳作だ。そういえば「女学生の友」もこの人だったなあ。

■とにかく藤沢周平の短編小説の、短編小説らしい旨味と抒情を見事に映画に写し取ったところが秀逸。篠原哲雄のカット割りの的確さも特筆に値する。いまどき、これほど正確なカット割りで見せる映画はなかなかお目にかかれない。どちらかというと低予算映画を住処とする喜久村徳章の撮影も絶品。これは映画館で観たかった。長田達也の照明も非常にオーソドックスで、東映大映の中間くらいの感じ。撮影と照明は「桜田門外ノ変」を大きく凌駕する。昼光の淡い陰影に淡彩な情景、室内では光源に応じた色調に変化し、適度な陰が生まれる。山桜の木陰を生かしたロケ撮影も見事。

■難点は誰もが指摘するように、ラストに流れる一青窈のテーマソングの存在で、これがなければ★★★★でも良かったかも。もちろん一青さんは好きなのだが、近年の日本映画には珍しいほどの、せっかくの余韻を無理やり盛り上げる形になってしまったのは、もったいない。四家卯大がせっかく綺麗な劇伴を書いているのに、惜しいことこの上ない。

■配役も絶妙で、篠田三郎檀ふみからあれだけの演技を引き出した演出は凄いと思う。主演の田中麗奈を敢えてデビューしたてのアイドルのような生硬さでまとめあげるという離れ業も侮れないが、相手役の東山紀之を完璧な時代劇スターとして演出した手腕にも舌を巻く。この人、生まれる時代を間違えたね。世が世なら、時代劇の大看板スターだったはずだ。殺陣の切れ味も鋭いし、ほんとに逸材だ。

■製作はバンダイビジュアルジェネオンエンタテインメントテレビ朝日ほか、制作はデスティニー。

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