小川の辺 ★★☆

小川の辺 【初回限定版】 [DVD]
小川の辺
2011 ヴィスタサイズ 104分
T−JOY京都(SC6)
原作■藤沢周平 脚本■長谷川康夫飯田健三郎
撮影■柴主高秀 照明■長田達也
音楽■武部聡志 美術■金田克美
VFXスーパーバイザー■浅野秀二
監督■篠原哲雄

■「山桜」が意外に良かったので楽しみにしていたのだが、端的に言って期待外れ。
■映画を観てやっと思い出したが、原作小説を読んでいる。読んでいるけど、ほとんど印象に残らなかったのは、あまり大した出来ではないから。しかし、この映画は、その残念な小説を忠実に映画化してしまった。原作小説は、わりと重い話の中に清涼剤のように置かれたもので、そもそもそういう役割で作られた小説だ。それを、単純にそのまま映画化したのでは、話が持つわけがない。
■実際、話の薄さに驚く。原作小説どおりだから仕方ないというのだろうが、こうした小説こそ脚本家の腕の見せ所のはずだ。それができないところに、藤沢周平ものの苦しさがある。というか、観客にとっては原作どおりよりも、橋本忍のように原作を大胆に膨らませた劇化のほうが、もちろん有難いはずなのだが、製作委員会システムの限界か、これがデスティニークオリティというものか。
■脚本面では、素人目にも工夫不足で、上意討ちの道中に事件の発端が回想されるという誰でも思いつく形式で、何の創意工夫も無い。お話のボリュームとしては50分もあれば足りる話である。東芝日曜劇場宮川一郎の脚本、鴨下信一の演出でドラマ化すれば傑作になったかもしれない。これを100分の映画にするのであれば、東山紀之の兄のエピソードと菊池凜子の部分を並行して描かないと持たない。この映画では東山紀之狂言回しでしかなく、ではドラマを担うはずの菊池凜子はどうかといえば、これも原作に書かれていないから表現されていない。つまりドラマが無い映画になってしまった。
■主演の東山紀之は決して悪くないし、「必死剣鳥刺し」の主役をやっていれば、傑作になったはずだが、今回は役不足だ。討つべき片岡愛之助も、同様に役不足で、歌舞伎俳優らしい名調子の片鱗を見せはするが、それ以上の見せ場が無い。勿体ない限りだ。「新日本紀行」そっくりの劇伴は失笑を誘う。
■製作はバンダイビジュアル東映東映ビデオほか、制作はデスティニー。

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