ひき裂かれた盛装 ★★★☆

ひき裂かれた盛装
1967 スコープサイズ 90分
京都駅ビルシネマ
原作■黒岩重吾 脚本■池田一朗
撮影■森田富士郎 照明■伊藤貞一
美術■内藤昭 音楽■鏑木創 
監督■田中徳三

黒岩重吾の「夜間飛行」という小説を原作にした、都会派ピカレスクロマン。といっても、実質主役が成田三樹夫、ある目的のために彼と手を組むレズビアンの悪女役が藤村志保、気は強いが純情な社長令嬢が安田道代で、監督が田中徳三という珍品。だが、なかなか見所が多く、滋味に富んだ掘り出し物だ。配役を含めて、大映末期の、明らかに低予算映画だが、都会派サスペンスと大映京都の鄙びが不思議な味わいを生んでいる。
小沢栄太郎が演じる巨悪に対して、彼の土地買収計画を出し抜いて巨利を得ようとする野心家が成田三樹夫の役柄で、非常にカッコいい。満蒙国境付近で生まれ、中国人に育てられ、そして捨てられ、アングラ世界を住処として、度胸と才覚で成り上がって行こうとする汚れた英雄なのだが、安田道代と知り合うことで、すっかり愛の虜になってしまう。このあたりが悪としての魅力が不徹底なところでもあるのだが。
■対する悪が、小沢栄太郎の愛人となりながら、彼を出し抜いて利益を横取りしようと企むレストラン経営者の藤村志保で、レズビアン仲間(?)の巨漢の女(大平洋子という怪女優が演じている)や浜村純、橋本力(役名は牛殺し)を手下として使って、小沢栄太郎を追い詰めてゆく。このあたりの策略はB級映画の楽しみが満載で、特に大平洋子のキャラクターは秀逸。日本映画ではあまりない役柄で、強烈。
■徳島のがけっぷちで成田と安田がラブシーンを演じる場面では、ナイトシーンなのに、全く擬似夜景になっていないカットが見られ、ニュープリントを焼く際にキャメラマンがチェックをしていない可能性がある。というか、通常ニュープリントを焼くときには、キャメラマンは立会うものなのだろうか?DVDソフトでも、古い映画ではナイトシーンがデイシーンと同じ調子で焼かれていることがたまにあるが、当時の上映用プリントを焼くときには、どう指定していたのだろうか。
■今回、久しぶりに大映京都の映画をスクリーンで観たのだが、その色彩の濃厚さに驚いた。ほとんど最近のハリウッド映画並みの色乗りの厚さがあり、肌色の発色のこってりとした様子や、アップショットの背景のボケ味の立体感など、非常にリッチなルックになっている。むしろ、最近の日本映画は、もっとコントラストの弱い、肌色にも透明感の感じられるルックが多いと思うが、この濃厚で、しかし渋い色調と色あいの表現には驚かされた。藤村志保は若干粉っぽい肌色で、安田道代の肌色は思い切って真っ黒に近い。成田三樹夫の顔色の良いこと。記憶によれば、例えば「怪談雪女郎」などはフジフィルムを使って、もう少し抑えた水彩画的な発色だっとと思うので、素材によってカラーコントロールも違うのだろうが。


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