「女の小箱」より 夫が見た
1964 スコープサイズ 92分
高槻松竹
原作■黒岩重吾 脚本■高岩 肇、野上竜雄
撮影■秋野友宏 照明■伊藤幸夫
美術■渡辺竹三郎 音楽■山内 正
監督■増村保造
いわずと知れた増村保造の傑作。スクリーンで観られる機会は絶対に逃がすことができない。若尾文子、田宮二郎、岸田今日子が競演する「不信のとき」と2本立てというプログラムも気が効いている。
愛というものがあるとすれば、そして悲劇というものがあるとすれば、その究極の姿がここに刻まれているだろう。若尾文子が、岸田今日子が、愛を突き詰めようとするとき、悲劇の装置は発動し、その惨劇は宿命のように現前するだろう。それは恐怖と甘美が溶け合った、地獄でもあり天国でもある血の儀式であるだろう。
岸田今日子が血まみれのナイフから引き剥がす白い指、微妙なラメの入ったガウン(ネグリジェ?)の滑らかな黒、そして田宮二郎の体内から流れ出す夥しい鮮血の赤、山内正の官能的なメロディによって全てが完璧なフォルムのなかに溶け合う。映画における官能とは、まさにこのことだろう。
多分、数年前の増村保造レトロスペクティブの際のニュープリントで、その際にも劇場で見ているが、「不信のとき」に比べると全体に発色は抑え目で、光の艶も少ないのは、キャメラマンの映像設計というよりも、フィルムの特性なのだろう。
参考
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