古都憂愁 姉いもうと ★★★★(@京都駅ビルシネマ)

古都憂愁 姉いもうと
1967 スコープサイズ 89分
京都駅ビルシネマ
原作■川口松太郎 脚本■依田義賢
撮影■武田千吉郎 照明■山下礼二郎
美術■内藤昭 音楽■小杉太一郎 
監督■三隅研次

■昔、テレビで観ていたが、スクリーンで観ると、ますます味わい深い。小品のはずだが、美術装置の贅沢さに陶然とする。撮影は情感の表現に強いという印象がある武田千吉郎で、照明もシャープでコントラストの効いた陰影を生み出す山下礼二郎なので、映画の三分の二を占める戦中の場面の、少し時代がかって、京都風の情感が濃い生活空間を濃密に造形してくれる。

藤村志保と若柳菊の姉妹の物語であるが、八千草薫の物語でもあることを改めて思い出した。狂言回しとして船越英二がかなり大きな役柄を演じているが、すっかり忘れていた。

■改めて観ると、時代を越えた傑作である。八千草薫が実に巧いし、藤岡琢也がはまり役を完璧に演じている。メロドラマを撮ると、少々めそめそしすぎるのが三隅研次の悪い癖、というかサービス精神なのだが、本作はそれも適度に抑制されている。

■それにしても、観客の数が少ないのは残念だ。仮設映画館なので、時々、結婚式の鐘の音が聞こえてくるので最初は混乱するが、馴れれば大丈夫だし、座席はパイプ椅子かとおもいきや、ちゃんと映画館用のものだし、なかなか快適なのに。

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