殿様と私 ★★★

殿様と私
2007年 文学座 紀伊國屋サザンシアター
NHK BS2 ミッドナイトステージ館
作■マキノノゾミ 美術■奥村泰彦 照明■金英秀 音楽■上田亨 演出■西村信廣
出演■たかお鷹、加藤武、浅野雅博、城全能成、星 智也、寺田路恵、富沢亜古、松山愛佳

■明治19年、急速な西洋化になじめない白河子爵は、家臣が侮辱されたことに腹を立てるが、息子に暴力に訴えるより、鹿鳴館で見事なダンスを披露して、鼻をあかしてはと提案される・・・

■2時間30分近い大作だが、さすがにマキノノゾミだけあって飽きさせない。美術と照明も経済的ながら、質が高く、見応えがある。鹿鳴館でのダンスの件は前半で終結し、後半はノルマントン号事件に義憤を感じた子爵たちが赤穂浪士のいでたちで逮捕された船長を成敗しに出かけるという顛末になる。

■が、物語のもうひとりの主役は子爵の娘で、彼女の精神的な自立と成長が、日本の近代化とダブらせて描かれる。このあたりのメロドラマの作りかたも堂に入ったもので、昔の松竹映画の秀作を観ているような気になる。演じる松山愛佳も清潔感があり、まだ硬さがあるものの、非常に好演している。足に障害があるという古典的なヒロイン像で観客の同情をひいて、巧みに泣かせる。

■また、観客の反応が実に素直で、よく笑う。もちろんメインは文学座の固定客と思しいおばさんたちだが、この反応のよさがこちらまで愉しい気分にしてくれる。雰囲気的には新劇というよりも大衆演劇に近い。たかお鷹という人も、いわゆる新劇俳優というよりも、もっと軽演劇的な柔らかさが勝っている。

■殿様とダンス教師のアメリカ人の婦人が言葉の通じないままというのが作劇の狙いで、それでもダンスによって通じるところがあるというラストが腑に落ちる。また、台詞の流暢さ、美しさは、特筆に価すると思う。

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