次郎長三国志 第六部 旅がらす次郎長一家 ★★★☆

次郎長三国志 第六部 旅がらす次郎長一家
1953 スタンダードサイズ 104分
NHKBS2録画
原作■村上元三 構成■小国英雄 脚本■松浦健郎
撮影■飯村正 照明■西川鶴三 
美術■北猛夫、浜上兵衛 音楽■鈴木静一
監督■マキノ雅弘

■凶状旅の途中で、旅相撲の窮状を救ったことがある保下田(ほげた)の久六に匿われるが、実は久六は役人と内通しており、次郎長一家は辛うじて逃げ延びるが、その途上でお蝶が病を得て息を引き取る・・・

■途中で次郎長一家を助けるやくざ者(山本廉)の女房が登場し、越路吹雪が見事な女侠を演じてみせる。この場面は、マキノ節が炸裂した名場面。頼りないやくざ者の夫を気遣って、神様に願をかける場面の一人芝居は、その台詞の可笑しさと同時に、この女の鉄火肌の下に隠した情の厚さをたっぷりと描き出して、素晴らしい名調子だ。

■このシリーズ、毎回名場面が登場するが、ほとんどがやくざ者の頼りない男を気丈に支える、心に侠気を隠した女を描いているのが特徴だ。いわゆるやくざ映画なのだが、ちっとも後年の東映映画の仁侠映画には似ておらず、そうしたジャンルが確立する前の、やくざ映画が比較的自由な世界観と人間描写を持ちえた時代の映画である。

■マキノ映画の一方の極である凄惨な暗さを余すところなく表現した、シリーズ中でも異色作ではないだろうか。この人間描写は「いれずみ半太郎」の暗さに通じているし、今週金曜日に放映される「仇討崇禅寺馬場」の絶望に繋がっている。(はずだ)

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