朝日新聞の以下の記事によれば、円谷プロや日本現代企画で特殊技術、監督などを担当して数多くの特撮作品を残した高野宏一が亡くなったそうだ。
朝日新聞記事 「特技監督・円谷プロダクション元専務、高野宏一さん死去」
特撮マニアには決して忘れられないその名前は、主にウルトラマン、ウルトラセブンの特殊技術をほぼ一人で担当したことで有名で、第二期怪獣ブームの時代にはウルトラシリーズだけでなく、日本現代企画の「アイアンキング」や「レッドバロン」などで特撮と本編監督を兼任するなどして活躍の場を広め、80年代以降は円谷プロの役員として特撮指導兼プロデュースを担当し、平成ウルトラ三部作では監修として活躍した。その後、円谷プロのお家騒動に絡んで解任され、訴訟沙汰に発展して古手のファンをやきもきさせたが、73歳の死はあまりに早すぎた。
なにしろ、日本のテレビ特撮映画の生き字引のような人なので、歴史的資料として回顧録を残してほしかったし、演出家としても、もっと研究されるべき人だった。晩年、撮影の第一線を退いていたせいか、積極的にインタビューを試みる人もいなかったようだが、円谷プロ特撮の舞台裏、日本現代企画作品の舞台裏、テレビ版日本沈没の当時としても破格な大特撮の舞台裏、さらに統一教会が製作したテレンス・ヤング監督による「仁川」の特撮に参加したエピソード*1、その他(たぶんあったはずの)東南アジア映画への協力など、聞いておくべきトピックが沢山あったのに、ほとんど何も語り残さずに逝ってしまった高野宏一は、その演出スタイルのようにさりげなくわれわれの前を通り過ぎてしまった。
とにかくテレビで特撮ドラマを大量に演出することで、テレビ映画におけるミニチュア特撮のクオリティのスタンダードを作った点に功績の大きかった人で、たまに佐川和夫や矢島信男や川北紘一らが気合を入れて、凝ったミニチュアワークを見せると、凄い大特撮!と評価されたし、日本現代企画での鈴木清やテレビでの中野昭慶は明らかに杜撰に見えたものだ。しかし、高野宏一の特撮演出もキャメラが佐川和夫の場合と鈴木清の場合では構図からしてぜんぜん違っており、特にテレビ特撮における鈴木清の貢献は絶大であった(特撮監督としてはどうも冴えなかったが)ことも忘れてはならないだろう。
とにかく、世人はもっと高野宏一に敬意を表するべきだし、氏の静かな逝去を重大に受け止めなければならないということだけは明記しておきたい。
*1:確か、本人がインタビューで参加予定と語っていたはずだが、実際に特撮を担当したのかどうか定かでない。