怪奇十三夜「妖怪血染めの櫛」 ★★★

怪奇十三夜 第四回 妖怪血染めの櫛 [DVD]
怪奇十三夜「妖怪血染めの櫛」
1971 スタンダードサイズ 48分
DVD
原作■小泉八雲 脚本■八尋不二
撮影■萩原 泉 照明■?
美術■柴田篤二 音楽■牧野由多加
監督■中川信夫


 釜が不気味に鳴動し、占いが凶と出た縁組を貫きとおした若い男女、だが男(酒井修)の心は次第に離れ、外に女(真山知子)を囲い、妻(佐々木愛)は病死する。だが、妻の遺品の櫛が女の顔に刺さって死に、男は落ちぶれて竿竹売りで糊口を凌ぐことに。おまえは呪いを受けていると陰陽師に断言された男は、三日三晩の物忌みに入るが・・・
 撮影は日活でB級映画を専門に担当していた萩原泉、美術は大映で大作も手掛けた柴田篤二で、日活と大映の断末魔であったダイニチ映配体制を引き摺りながらユニオン映画が製作した怪談シリーズ。当然のこと、テレビドラマとしても超低予算だ。
 浜村純、竜崎一郎、ナレーターが永井智雄という豪華な配役なのは、怪談映画の巨匠中川信夫ならではのことだろう。
 あまり優れた作品ではないが、酒井修演じる男の徹底的なだらしなさ、だめさ加減は見ていて痛快なほどだし、特に後半の長屋に逼塞する男を脅かす亡き妻の亡霊の表現にはさすがに中川信夫のシュールな演出が冴え、後半のイメージメーカーとなった蟹江敬三の好演もあって、怪談映画ならではの人生のどん詰まり感、閉塞感を醸し出す。こうした人間の屑の、虫けらよりも軽いかもしれない命のギリギリのやりとり、生き残ろうとする悪あがきの無様さこそ、なかなか他のジャンルの映画では観ることの出来ない真の人間像であろう。かつて勝新の秘蔵っ子と言われた酒井修の変貌ぶりも感慨深く、しみじみと感傷を誘う。
 怪談映画の醍醐味雨の長屋の屋根に四つん這いで取り付いた亡霊のイメージなど、夢にみそうなほどシュールで怖い。中川信夫の奔放なイメージはさすがに凄い。
 脚本としては大ベテラン八尋不二の仕事とは思えないアバウトなもので、やけにナレーションが多いのは、長い脚本を縮めでもしたのだろうか。吉備津の釜から始まって、牡丹燈篭で終わるというネタの組み合わせも、なんだか安易だなあ。