JANE EYRE
1944 スタンダードサイズ 96分
DVD
ロバート・スティーブンソンが監督、オーソン・ウェルズとジョーン・フォンテーンが主演するゴシック文芸メロドラマ。
ヒロインの少女時代のパートが異様な緊迫感に包まれて、陰影のキツイ撮影や照明の表現主義的な画作りも素晴らしく、子役のペギー・アン・ガーナーの巧演(これは凄い)もあって、傑作かと思われたが、ヒロインがジョーン・フォンテーンに交代するや、ヒロインの人間像に魅力が無くなってしまう。この女優は「レベッカ」では美人女優だったはずだが、ここでは地味な髪型が全く似合わず、顔の大きさが際立って不美人に見えてしまう。
虐待を受けた叔母に、別れ際に悪口雑言を投げつける自己主張の激しい小娘の芯の強い気性のおもしろさが、後半まったく影を潜めてしまい、気難しく倣岸なオーソン・ウェルズとの単純な恋愛劇に移行してしまうのは解せない。
古城の塔に幽閉される謎の人物、深夜の城内にこだまする狂笑といったゴシックな道具立ては悪くなく、作画合成が非常に効果的に使用され情景描写にも抜かりは無いのだが、ワイラーの「嵐が丘」のような劇的な見せ場や劇的高揚に乏しく、典型的な通俗メロドラマに終始している。