花よりもなほ ★★★

花よりもなほ
2006 ヴィスタサイズ 127分
ユナイテッドシネマ大津(SC1) 
原案■是枝裕和 脚本■是枝裕和
撮影■山崎 裕 照明■石田健司
美術■磯見俊裕 音楽■タブラトゥーラ
監督■是枝裕和


 父親の敵討ちを誓って江戸のボロ長屋に住まう主人公(岡田准一)と、長屋の訳ありげな奇妙な住人たちの生活を、赤穂浪士討ち入りの前日譚として描いた時代劇。

 長屋の肥溜めの糞が肥料となって餅に変わるように、主人公の仇討ちの復讐心の変貌を落語的に描き出した時代劇だが、こうした物語なら90分くらいのリズミカルなプログラムピクチャーで十分ではないか。是枝裕和のリズム感にはどうも違和感があるのだ。

 松竹京都撮影所を使用したオンボロ長屋のセットや撮影は重厚なもので立派だが、映像的には最近の山田洋次の時代劇と似ており、もっとルックの差異を狙ってもよかったのではないか。

 不出来な映画ではないが、どうも気が行かないのは、ちゃんばらの不在だけが原因ではなくて、映画から立ち上がる情味が、生世話物らしい時代劇のそれではなく、現代劇と似ているせいではないかと考えてみた。今回は、宮沢りえよりも、夏川結衣が時代劇の女にうまくハマッて、出番は多くないものの、地に足のついた生活の実感を醸し出している。

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